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新たなジャパニーズドリームを!(その11)

  • 2009/07/28(火) 00:40:23

”新たなジャパニーズドリームを!”バックナンバーはこちら。

(その1) (その2) (その3) (その4) (その5)

(その6) (その7) (その8) (その9) (その10)


 これから日本が目指すべき国家像や理想とする社会について考える連載企画、”新たなジャパニーズドリームを!”今日はその11回目である。

前回では、近年の日本では知らず知らずのうちに見失われている、「日本という国家や日本企業が営まれる目的とは、物質・精神の両面にわたり日本人1人1人が幸福になることである」というすべての原点に立ち帰るべきこと、そのためには日本企業の経営戦略や政府の産業育成策において、発想の全面的な転換が求められていることを指摘した。

 今の日本をおおっている閉塞感は、少なくとも1980年代までは通用していた高度経済成長期の成功体験に多くの日本人が縛られ、時代や国際環境の変化に適切に対応できる、新しい企業戦略・産業育成策を打ち出せていないことに大きな原因があるように思われる。

それでは高度経済成長期と現在とでは、日本経済とそれを取り巻く国際環境はどう変化しているのか、そこから導き出せる新しい企業戦略・産業育成策とはどういうものか考えていきたい。

 ところでA.キンドルバーガーやB.クローサーが提唱した国際収支発展段階説をご存知だろうか?

国際収支発展段階説とは、一国の経済が発展・衰退していく過程が国際収支構造の変化となってあらわれるとする説である。

国際収支は、ある国が外国と経済取引を行った結果としてあらわれる数字であり、モノやサービスの輸出入額をあらわすのが(1)貿易サービス収支

海外への投資にともなう利子・配当金や外国への出稼ぎによる報酬のやり取りをあらわすのが(2)所得収支

政府による経済援助のやり取り等をあらわすのが(3)経常移転収支である。

(1)+(2)+(3)=経常収支(4)の関係が成り立つ。

また、国内居住者と非居住者の間で行われた資産・負債のやり取りをあらわす(5)資本収支があり、資本収支はお金を海外に投資する額が多ければマイナス(赤字)、海外から入ってくる投資額の方が多ければプラス(黒字)となり、(1)~(4)までとは黒字・赤字が逆であることに注意が必要である。

------------------------------------ 
 一国の国際収支

(4)経常収支

(1)貿易サービス収支(以下、貿サ収支と略)

(2)所得収支

(3)経常移転収支

(5)資本収支

-----------------------------------

国際収支発展段階説では、政府間の経済援助等のやり取りをあらわす(4)経常移転収支を除き、ある国が国外に持つ資産から負債を引いたもの(プラスなら対外純資産・マイナスなら対外純債務)を加えた数字で一国の経済発展段階を見る。

ここをクリック 

以下、この図を参照しながら見て行こう。



Ⅰ未成熟な債務国

経済が遅れているために、貿サ収支も所得収支も赤字となる。よって経常収支は赤字。

資本を海外からの借り入れに依存しているため資本収支は黒字となり、対外純資産はマイナスとなる。

典型的な発展途上国のそれである。


ふさわしいと思われる例  

   トルコ(2006)

経常 -327 

貿サ -278

所得 -65

資本  457


(単位 億・米ドル)

特記以外、出典はすべてIMF ”International Financial Statistics 2008.5”による
対外純資産額は不明(データ募集中)


Ⅱ成熟した債務国

経済発展に伴い輸出産業が成長、貿サ収支が黒字に転じるが海外からの資本借り入れの利払いである所得収支の赤字を埋めるには至らない。

よって経常収支は赤字。

相変わらず資本を海外からの借り入れに依存しているため資本収支は黒字となり、対外純資産はマイナスのままである。


例   チェコ (2006)

経常 -45

貿サ  45

所得 -82

資本  54


Ⅲ債務返済国

引き続き経済が発展し、貿サ黒字額が海外からの資本借り入れの利払いである所得収支の赤字を上回るようになる。よって経常収支は初めて黒字へと転換する。

海外から借り入れた資本を返済するため、あるいは資本輸出をはじめるために資本収支は赤字となり、対外純資産のマイナスは減少へと向かう。


例   フィンランド (2005)

経常  69

貿サ  88

所得  -3

資本  -32



Ⅳ未成熟な債権国

経済の高度な発展にともない貿サ黒字が増大、対外投資も増えて資本収支も赤字基調となる。

対外純資産は黒字に転換し、そこから得られる利子や配当金などの受取のため、所得収支も黒字化する。


例 ドイツ(2006)

経常 1507

貿サ 1553

所得 288

資本 -1801


Ⅴ成熟した債権国

人件費や製造コストの上昇等で国際競争力を失うため貿サ収支が赤字に転換するが、巨額の対外資産から得られる利子や配当金などの受取による所得収支の黒字がそれを埋める。

よって経常収支全体はまだ黒字。

成熟した債権国の代表はスイスであろうか。

まだスイスの貿サ収支は赤字になってはいないが、黒字額のほとんどをモノではなくサービス輸出に頼り、黒字額そのものも徐々に減ってきている。

一方で対外資産から得られる所得収支の黒字額が貿サ収支の黒字額を上回るようになった。


   スイス(2006)

経常  548

貿サ  282

所得  369

資本 -728



Ⅵ債権取り崩し国

消費の拡大で貿サ収支の赤字が巨額となる一方、所得収支の黒字ではそれを埋めきれなくなる。

よって経常収支は赤字に転換する。

経常収支の赤字をファイナンスするべく、海外からの資本流入に依存するようになるため資本収支も黒字化。

対外資産の額を債務が上回り、対外純資産はマイナスに転落してしまう。

典型例は現在のアメリカ。


   アメリカ(2007)

経常 -7386

貿サ -7085

所得  743

資本  6775


中国やブラジルなどは、Ⅲ債務返済国からⅣ未成熟な債権国へ向かっている段階と思われる。
韓国は、Ⅱ成熟した債務国とⅢ債務返済国の間をウロウロしている感じだ。


    韓国(2007)

経常 59

貿サ 88

所得 7

資本 62


 それでは我が日本はどうなのだろうか。

 日本の場合、2005年ごろから貿易サービス収支の黒字を所得収支の黒字額が逆転して以来、貿サ収支黒字は減少傾向、逆に所得収支黒字は増加傾向にある。

日本   2004   2007

経常   1720   2104

貿サ   942    835

所得   857    1385

資本   177   -1911


近年の日本は統計上の数字を見る限り、Ⅳ未成熟な債権国からⅤ成熟した債権国へと向かっている兆候があらわれている。

こうした傾向がこのまま続くのであれば、あまり望ましいこととは言えない。

製造コスト上昇や円高によって日本国内の製造業が国際競争力を徐々に失いつつあるためか、貿易サービス収支の黒字額が減っており、その代わり日本企業が国外へ工場を移転させるなど海外投資を行った結果、所得収支黒字が急増したと分析できるからだ。

おそらく国内にとどまった工場でも、働いている人達は所得の低い非正規労働者が多くなっているのではないか。

このシリーズの第6回目で、製造業を含む日本の第二次産業の就業者数が1992年をピークに現在に至るまで一貫して減少し続けていることを指摘したが、そのことは国際収支統計の数字も裏づけているように思われる。

日本経済が好調だった1980年代までと現在との最大の違いは、製造業の国外脱出と産業空洞化が起こる前か後かという点にあるように思われる。

その裏返しとして、日本企業の投資が増えた東南アジアや中国の急速な発展がある。

 よく「日本の製造業は、産業ロボットや金型プレス機といった製造装置や中間部品などの”生もの”をつくる分野で世界一強いから大丈夫だ」という人がいる。

それは事実ではあるものの、しかし統計の数字を見る限り日本の製造業就業者数の減少を食い止めるには至っていない。

やはり製造装置製造などの”川上産業”ではなく、それを使ってテレビなりパソコンなり録画装置なりを大量生産する”川下産業”の方が、多くの労働者の雇用と所得の増大につながるように思われる。

逆にいえば、1985年のプラザ合意以降にはじまった急激な円高によって日本の製造業が続々と海外へ出て行ってしまい、国内に残った企業も製造コストや人件費を徹底的に削ったことが非正社員の低所得労働者を急増させ、現在問題になっている貧富の格差や少子高齢化といったことの原因になったと思われる。

 さらに最近では「日本経済は内需を増やせば大丈夫」という人が目立つ。

確かに輸出が不振のときは内需を拡大させて不況を乗り切るしかないし、日本が食料・エネルギー・鉱物資源を自給できる国で、国内で富がグルグル回っている分なら問題はない。

しかし現実はそうでない以上、日本の内需(消費)が増える一方で輸出がおろそかになれば、日本の富は海外の食料・資源輸出国へと流出していくこととなる。

そうなれば当然、貿サ収支は赤字に転換するだろうし、所得収支の黒字でそれを埋めきれなくなれば、経常収支全体も赤字になってしまう。

万が一こうなってしまったら、日本は自分の対外資産を取り崩さないと生きていけない国になってしまうことだろう。

Ⅴ成熟した債権国からⅥ債権取り崩し国への転落である。

Ⅴ成熟した債権国化はⅥ債権取り崩し国転落へとつながる可能性があり、日本はドイツのようにⅣ未成熟な債権国に踏みとどまり続ける必要があるように思われる。

現在の日本はその岐路に立たされているのではないか。

 歴史を振り返って見れば、かつて世界覇権を握ったイギリスも18世紀末の産業革命によって世界の工場となったが、19世紀中ごろから始まった重化学工業化(第二次産業革命)の波に乗り遅れ、ドイツやアメリカの製造業に抜かれることになった。

貿易収支は赤字になったが金融・保険といったサービス業や海外資産から得られる収益によって経常収支は黒字だった。

それがイギリスの世界覇権を支えていたが、20世紀前半の二度の世界大戦によって基軸通貨としてのポンドも覇権国家としての地位も失ってしまった。

 20世紀後半の覇権国家であり世界の工場はアメリカだった。

だがアメリカの繁栄も1960年代のベトナム戦争敗北で陰りを見せはじめ、70年代には経常収支が赤字化し、80年代には経常収支・貿易収支で大幅な赤字を垂れ流すようになった。

とうとう1989年に対外総資産が対外総負債を下回り、アメリカは純債務国に転落した。

現在、イギリスもアメリカもⅥ債権取り崩し国の段階にあると思われ、そこから抜け出せる兆しは見せていない。

日本を、英米のようにⅥ債権取り崩し国に転落させては絶対にいけない。

次回につづく




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この記事に対するコメント

私は思います

経営者と政治屋には同胞愛と言う意識を思い出して欲しい。
その企業はどの国で産まれて、誰が造って誰がそだてたのか。
私には我が国の経営者が悪質なマスゴミや役人と政治屋に幻惑されて、異常な常習的近視眼的傾向に陥っている気がします。
その結果、すべての基本を忘れてしまっている・・・
我が国は社会の上層部を総入れ替えする時期に来てますね。

  • 投稿者: 火天大有
  • 2009/07/29(水) 10:30:43
  • [編集]

火天大有さん

>私には我が国の経営者が悪質なマスゴミや役人と政治屋に幻惑されて、異常な常習的近視眼的傾向に陥っている気がします。

同感ですね。

日本という国家あるいは企業は、いったい何のために営まれているのかという最重要の戦略目標があいまいになってしまっているため、”合成の誤謬”が起こっているのが現在の日本だと思います。

財界が、人件費を削減して企業競争力を高めようとするのは経営者の論理としては合理的ですが、国内市場の縮小につながって結局自分達の首をしめているわけです。

お役所も、中央・地方の別なく、利己主義に走っている人が多くなっているのではないでしょうか。

国民のためにお役所があるのではなく、自分達が国民から集めた金で食っていくためにお役所があるみたいな。

こうやって、政治・財界・国民が足の引っ張り合いをやっている限り、本当に意味で日本人は幸せになれないと思います。

  • 投稿者: クロフネ@管理人
  • 2009/07/29(水) 22:28:58
  • [編集]

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