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中国が日本を抜く?

  • 2009/06/02(火) 22:59:04

 トムソーヤの冒険を書いた有名な作家マーク・トウェインは相当の知恵者だったようで、この世の真理を突いた様々な名言を残している。

私が好きなものに、

「我々が皆、同じ考え方をしたからといってそれが一番良いということにはならない。意見の違いがあるから競馬だってできるのだ」

「真実が靴の紐を結ばぬうちに、虚偽のニュースは世界を一周してしまう」

というのがある。

 彼はこうも言っている。

「嘘には三つある。普通の嘘と、真っ赤な嘘と、統計だ

 統計は、物事をおおまかに理解する時は便利だが、使い方によってはいくらでもウソをつける。

例えば「高級バーに通っていて失策ばかりしている麻生政権と、政権交代によって間違った政治を正そうとする鳩山民主党、あなたならどちらを支持しますか?」という統計調査の質問があれば、ほとんどの国民は「鳩山民主党」と回答するだろう。

これが統計のつくウソだ。

だからこそ私は、統計の数字を「絶対に間違いの無いソース、自分の正しさを証明する聖なる御旗」として振り回すようなことはしない。

 経済統計もまた同じである。

最近、今年中に中国の国内総生産(GDP)が日本のそれを抜くのではないかという話題がチラホラ出ている。

中国では世論調査まで実施され、半数が「日本を抜く」と回答したそうだ。

参考記事 

中国のGDP統計の数字が日本を抜くということが起こった場合、「だからどうした」という話であり、その現象をそのまま受けとめるのであれば特に問題は無い。

だが、13億の中国人はもちろん、日本人を含めた世界中の人たちの恐らく90%は、「中国のGDP統計の数字が日本を抜く」という現象に「中国人が経済力で日本人を追い抜いた」という意味付けを行うのではないだろうか?

しかしこれも統計がつくりだす「立派なウソ」だ。

もちろん、「1人あたりGDPに直せば日本のほうが中国よりまだ上」というレベルのことを言おうとしているのではない。

 まずGDPの定義を見ておきたい。

内閣府の定義によると「国内で一定期間内に生産されたモノやサービスの付加価値の合計額。 “国内”のため、日本企業が海外支店等で生産したモノやサービスの付加価値は含まない」とある。

参考・”国内”と”国民”の違い 

つまり、GDP・国内総生産とは「ある一定期間内に、その国の居住者たる生産者による生産活動の結果生み出された、付加価値の総額」であり、もっとも注意を要する点は、この場合の”居住者”とはその国の国民にかぎらず、その国を主な活動場所とする外国企業の生産した分もGDPに含まれるということである。

中国のGDPと言った場合、中国資本の企業に所属する中国人が働いて生み出したモノのみならず、中国国内で活動する、天津トヨタや広州ホンダ・中国資生堂といった日系企業が生み出した富(付加価値)も、日本ではなく中国のGDPの方に加算されているのである。

これまで日本企業が蓄積した資本と技術を中国に持ち込み、中国国民を労働力として雇用してそれらを結びつけたことで、モノが生産されている。

日系企業も含めた「外資の威を借りて」ここまで中国のGDPが増えたということだ。

よって「中国のGDP統計の数字が日本を抜いた」から「中国人が経済力で日本人を追い抜いたことになる」と主張することがとんでもない間違いであることが、おわかりいただけたと思う。

これが経済統計の”ウソ”である。

だが、中国人・日本人も含めたGDPの正確な定義を知らない世界のほとんどの人は、「中国が日本を追い抜いた。これからは中国の時代であり、日本はもうダメだ」と考えてしまうのではないだろうか。

 それでも「じゃあ日本のGDPにだって外国企業の分が含まれているのでしょう。それはどうなの?」と反論する人がいるかもしれない。その通りである。

しかし、1950年代から70年代はじめにかけて日本が高度経済成長を達成する過程で、日本国内に進出した外資系企業の果たした役割はさほど大きくは無かったし、現在でもそうした状況に変化はないと思われる。

もちろん、日本が高度経済成長を遂げた時に、それに貢献した中国企業は存在しなかった。

逆に中国は日本と違って、人間だけは腐るほどいたが資本も技術も無かった。

「10億人の広大な市場」をエサに外資企業からそれらを導入して経済発展をめざすしかなかったわけで、現在でも中国経済における外資企業・外資との合弁企業の存在感と貢献度は非常に大きい。

前述の日系企業はもちろん、フォルクスワーゲン・GM・フォード・ルノー・ノキア・モトローラ・HSBCなど枚挙にいとまがない。

よって、日本のGDPにおける外資系企業の貢献度と比べて、中国のGDPにおける外資系企業の貢献度はとんでもなく大きいのである。

 もし、どうしても経済規模の国別対抗戦をやりたいのであれば、GDP・国内総生産ではなくGNI・国民総所得の方がふさわしいかもしれない。

GNIは以前はGNP・国民総生産といい、国の内外を問わずその国の企業がある期間に生み出した付加価値の総額であり、GNI=GDP+海外からの所得の純受取 の関係にある。


外務省HPより 


日本 GNI 4兆8256億ドル
 
    GDP 4兆3800億ドル


中国 GNI 3兆2064億ドル

    GDP 3兆2500億ドル

(いずれも2007年データ 出典 GNI:IMF GDP:世界銀行)

このデータで見ると、日本はGDPよりGNIの方が約4500億ドルほど大きい。
つまり日本で活動する外資系企業の生みだした富を差し引いても、世界に展開する日本企業がその分だけ海外からお金を稼いできたということになる。

しかし中国の場合は日本と逆で、GDPよりもGNIの方が500億ドルほど小さくなっている。
これは中国で活動する外資系企業の生み出した富がその分差し引かれたということであり、GNIで比較すれば、日本は中国より1兆6000億ドル大きい。

人口1人当たりGNIで比較すると、中国は日本のわずか6%でしかない。

(日本37700ドル 中国2400ドル)


 ただ、GDPにしろGNIにしろ、経済統計の数字で正確な国際比較をやるのは非常に難しいということは忘れてはいけない。

第一の問題は為替で、ドルとその国の通貨との為替市場の動きによって、統計の数字は大きく変わってくる。

購買力平価(PPP)で統計値を修正して正確な国際比較をしようとする人もいるが、二つの国の物価を比較するのにどういう商品を組み合わせて物価比較をするかでPPPにも大きな誤差が出てしまう問題がある。

さらに”生産境界”の問題もある。

GDPなど国民経済計算では、無料で提供されるモノは付加価値増加額としてカウントされていない。

日本の街中で配られているフリーペーパーやネット上のブログ・HPには、お金を払っても良いような価値ある情報が含まれていたりする。

そういったサービスが別の国では有料だった場合、GDPに加算されていない分、日本は不利となる。

中国各省のGDPを集計したら、中国全体のGDP統計値をオーバーしてしまったという話もある。

GDPやGNIで国際比較をするときは、あくまでも大まかな数字を表していると理解すべきで、鬼の首を取ったように「俺は勝った、お前は負けた」とやるものではないだろう。

 以上、統計はしばしば「ウソをつく」ものであることを解き明かしてきた。

アメリカのあるマスコミがこういうことを言っている。

「中国は”経済”で、日本自身の重商主義ゲームの中で日本を打ち負かすことになる」

これはいったい何を根拠に言っているのだろうか? まさか日中のGDP比較とか?

最近はやりのG2論もそうだが、一部の欧米人は、国土や人口の巨大さ・長い歴史とミステリアスな異文化感から、どうも中国を過大評価するきらいがあるように思われる。

(かつて19世紀の中国は欧米から「眠れる獅子」と恐れられていたが、日清戦争で中国のあっけない敗北を見るや、ピラニアのように中国を食い物にしていった)

さらに、多くの人が「中国が発展すれば、日本はただの小国になる」という単純明快だが間違ったゼロサム理論に陥っており、中国がいかに急速に発展しても依然として日本という経済大国が存在しているという事実を複眼的に理解することが苦手らしい。

 GDPやGNIといった経済統計を正しく理解し、中国・欧米はもちろん、日本国内からも一斉にあがるであろう、「GDPで中国は日本を打ち負かしたから、日本には希望が無い。もうダメだ」といった間違った主張に惑わされず、日本人は冷静に対処したいところだ。

日本はさまざまな問題を抱えているが、過去の栄光にすがって現実から逃避することなく、また誰かが何とかしてくれるのをひたすら待つのでもなく、国民一人一人がちゃんとやるべきことをやれば、戦後日本の第二次黄金期をスタートさせることは可能だ。




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この記事に対するコメント

いつも読みやすい流れで落ち着いた文章、しかも理論的で説得力がある文章に感服です。今後も更新楽しみにしております。

  • 投稿者: さえぱぱ
  • 2009/06/03(水) 12:14:13
  • [編集]

さえぱぱ さん

> いつも読みやすい流れで落ち着いた文章、しかも理論的で説得力がある文章に感服です。今後も更新楽しみにしております。

そのようなお言葉を頂きたいへん光栄です、どうもありがとうございます。

記事の質の高さ・信頼性を一番重要視しているつもりなのですが、逆に高頻度で記事を更新できないところがつらいところです。

今後ともできる範囲内でベストを尽くして行こうと考えておりますので、どうぞよろしくお願いします。

  • 投稿者: クロフネ@管理人
  • 2009/06/04(木) 22:49:36
  • [編集]

自国に否定的なのは

いくら母国とはいえ、余りにも夜郎自大な自国礼賛ばかりを見せられるのも嫌ですが。
我が国の報道は余りにも自国と自民族に対して否定的で悲観的な度が過ぎていて、何らかの悪意を感じます。
もしも悪意を否定するならばマスゴミや評論家諸氏に否定会見を開いて欲しいものです。
もっとも我が国の士気を損なう為の確信犯だとすれば、本音を語らせるのは不可能でしょうけどね。

  • 投稿者: 火天大有
  • 2009/06/05(金) 08:04:27
  • [編集]

火天大有さん

>いくら母国とはいえ、余りにも夜郎自大な自国礼賛ばかりを見せられるのも嫌ですが。

それは同感です。何事も、過ぎたるはなお及ばざるがごとしですね。

  • 投稿者: クロフネ@管理人
  • 2009/06/06(土) 02:02:10
  • [編集]

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