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輪転機を回してドルをばらまく?
- 2008/07/18(金) 22:18:27
サブプライム問題に端を発した世界の金融不安がなかなかおさまらない。
問題の深刻化を防ぐため、アメリカ政府はフレディマックやファニーメイといった住宅金融機関への支援に乗り出そうとしている。
産経新聞で「経済がわかれば世界がわかる」と題して、世界の政治経済問題に関するコラムを精力的に執筆していらっしゃる方がいる。
有益な情報・考察も多々あるので私もなるべく欠かさず読んでいるのだが、気になるのが「サブプライム問題も原油価格の高騰も、経済の悪いことはなんでもかんでもアメリカが悪い」的論調である。
特に「アメリカが基軸通貨発行国の特典を生かし、輪転機をまわしてドル紙幣を世界にばらまく」のが、お気に召さないようである。
まだ安倍政権が元気だったころ私のブログにも、多くの人が主張していて説得力があるように見せかけたいのか同一人物がハンドルネームを複数使い分け、しかも非公開コメントにして「にわかに信じられないのもわかる。でもアメリカがドル紙幣を印刷してシニョレッジ(通貨発行益)を荒稼ぎし、世界からタダでモノを手に入れているのは、間違い無くユダヤ金融資本の陰謀」みたいなことをしつこく書きこんでくる人がいて辟易させられたことがある。
しかし世界を一つの国、その国の通貨を現在の基軸通貨ドル、ドルを発行する中央銀行がアメリカだと仮定すると、商品やサービスの生産が増加し、世界の経済が順調に発展していくためには、それに応じた量の通貨を供給してやらないといけない。でなれけば世界はデフレ不況になってしまう。
特に冷戦が崩壊したことによってグローバリゼーションがより進展し、ロシアや中国・インドのように社会主義をやっていた国々が世界経済に新たに組み込まれたことで、世界全体の商品やサービスの生産高は劇的に増大した。
そこでアメリカがドルをばらまいて(供給して)世界中からモノを買ったからこそ2003年ごろから始まった、長期低迷で苦しんでいた日本を含む東アジア工業国やインド・ロシア・ブラジルなどの新興国の経済成長があったのであり、にもかかわらず「世界経済の諸悪の根源は、ドル紙幣をばら撒くアメリカ」というのであれば冷静さを欠いた議論だと思う。
かつてイェール大学の経済学教授ロバート・トリフィン氏が基軸通貨ドルと世界経済がかかえる矛盾として、”トリフィンのジレンマ”という説をとなえたことがあるのはご存知の方もおられるだろう。
トリフィンのジレンマとは、
世界経済が順調に拡大していくためには、それに応じて基軸通貨ドルの供給も増やしてやらないといけない。―(1)
だがそれは基軸通貨国アメリカによる世界へのドル垂れ流しに他ならず、アメリカの国際収支赤字が深刻になればドルの信認は失われ、ドル垂れ流しは持続可能ではなくなる。―(2)
そうなれば世界経済の発展は流動性(ドル)不足によって制限されるという深刻なジレンマをかかえる。
簡単に言うとこうだろうか。
そのジレンマを解消し、基軸通貨ドルを補完する狙いで1969年にできたのが、アメリカが事実上支配するIMFにつくらせたSDR(特別引出権)である。
で、現在の世界経済を見ると”トリフィンのジレンマ”の(1)は正しかったのであり、サブプライム禍がきっかけで今度は(2)の問題があらわになったように思える。
世界を一つの国に例えた先ほどの話に戻すと、流通する通貨ドルが増大し、経済発展によって中国・インド・ブラジル・ロシアなどの開発が始まった田舎(新興国)で需要が増えれば、副作用としてその国(世界全体)が経済過熱によるインフレになって、石油などのエネルギーや鉱物資源・穀物などの商品価格が上昇し、土地や住宅・株などの資産インフレが起こってくるのも別段驚くような話ではない。
そうしたインフレへの期待が、石油や金などのコモディティ相場や土地・住宅市場へ投機資金を流入させるのも自然な話である。(石油が1バレル=80ドルを超えたあたりから腹が立って、市況ニュースを聞くのも嫌になったが)
経済が過熱し、資産インフレが行きすぎれば当然調整が来る。(市場経済が万能だというつもりはないが)
それがアメリカ住宅市場のバブル崩壊であり、住宅を担保にしたローンは不良債権化した。いわゆるサブプライム問題である。
こういう景気循環とバブルの発生は、オランダのチューリップ投機やイギリスの南海泡沫事件なんかを見てもわかるように、どこの国だって起こることであろう。
日本だって「いつか来た道」である。
だったら世界の中央銀行たるアメリカがユル過ぎる金融政策をとったことが悪いんじゃないのという意見もあるかもしれない。
これだけ双子の赤字を垂れ流しているにもかかわらず、アメリカの長期金利がそれほど上がらないのはナゾと一時期言われていたが、であるならば、自国の輸出競争力を落としたくがないために、アメリカに頼まれもしないのにせっせと人民元を売ってドルを買いそれでアメリカに証券投資をし、金利を上げないことによって持続的なドル垂れ流し・中国製品購入をアシストしてきた中国のような国の責任も問われてしかるべきではないだろうか。
中国が己の経済発展のために大量の商品というデフレを輸出し、代金のドルでアメリカにお金を貸しつづけてきたことと、アメリカが中国を含む世界からお金を借りてドルと購買力を垂れ流してきたことは、バランスシート上で対になっていることである。
最近まで、アメリカ経済がドル垂れ流しの罰を受けて低迷しても、中国やインドなどの新興国の内需が日本や世界の経済をひっぱるから大丈夫というデカップリング論というのがあり、私は懐疑的であったのだが、このバランスシートを見ればやはりデカップリング論は机上の空論であったように思う。
また、大量のドル準備を抱え、低金利政策を長く続けて世界に低コストで流動性を供給してきた日本も、世界の流動性ジャブジャブとまったくの無関係ではないだろう。
アメリカのFRBは、サブプライム問題というアルコール中毒に苦しむ自国経済に、だましだましお酒(お金)を供給してやることで、どうにかこうにかソフトランディングをはかろうとしているように見える。
いくらアル中だからといって、いきなりお酒を全部取り上げると患者が禁断症状を起こしてショック死(金融恐慌発生)しかねないので、バーナンキFRB議長も苦渋の選択ではないか。
「アメリカは輪転機をまわして何も無いところからドルをひねり出してそれをばらまいている」と非難する人は多いのだが、何も無いところからお金をひねり出せる管理通貨制度だからこそ何とか世界経済が持ちこたえているのであって、もし今の今まで管理通貨制度ではなく金本位制が続いていたら、とっくの昔にサブプライム問題発の世界恐慌になって、世界中の銀行や会社がバタバタと倒産し街に失業者があふれかえっていたと思う。
これまで述べてきたことからも同意していただけると思うのだが、完璧なシステムではないにせよ、何も無いところからお金をひねり出せる管理通貨制度と不換紙幣というのは、これによって貴金属の生産量に関わらずお金の量を比較的自由に調節するのを可能にした、人類の偉大な発明品のひとつだと私は思っているのだが、それを「紙幣を印刷してシニョレッジを稼ぐのはけしからん」だの「それはアメリカの陰謀・ユダヤの陰謀」とか言う人がけっこういて驚かされる。
そうした人たちがしきりに言う「アメリカが輪転機をまわしてドル紙幣を世界にばらまく」うんぬんといった話も、二重の意味で間違っている。
「本当に経済のことわかっているのか?」と大変疑問に思うし、もしかしたらジョークで言っているのかもしれないが、少なくとも経済学を勉強したことが無い人に誤解を与えかねない言い方である。
そこで次回は、「アメリカが輪転機をまわしてドル紙幣を世界にばらまく」うんぬんがどうして二重の意味で間違っているのか、お話したい。
つづく
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通りすがりです
>悪いことはなんでもかんでもアメリカが悪い
実際そうじゃないですか。
「ダーウィンの真実」「シッコ」等のドキュメンタリーを見ればアメリカがやったことは悪いことばかりじゃないですか。グローバリズムがどれくらい貧富の拡大や自然破壊を招いているのかわからないんですか。ブッシュが軍需産業と結託してインチキな戦争を仕掛けたから学費を作ろうとイラク・アフガンへ出兵した貧しい若者達が殺されていく。
新自由主義者らしい自己弁護ですね。金さえ儲ければ人の命がどうなってもいいのか?このシャイロックが。
違う国のこと
輪転機で紙幣を刷って〜は、日本とアメリカが同じ国だという前提に立たないと出てこない意見だと思います。
大事なのは、金融の機能の回復であって、手法は二の次です。混乱を起こさないようなソリューションが求められるのは飽くまで理想論で、数字の達成のためにこの状況を積極的に隠し続けたグリーンスパンへの恨み節があっても良いと思います。
事ここに至ったら、混乱のない解決方法など、対処療法にもなりません。失われた○年を続けられるなら別ですが・・・。
順調に廻っているなら問題なしではありません。光と影を認識し、どこまで影を避け、光が陰っても良いかをコントロールする冷静さが求められます。
グローバリズムの構図は、カジノのオーナーがアメリカ、胴元がEU、大口プレイヤーが日本とオイルマネーで、その他の国は、ディーラーと繋がったサクラです。オーナーとプレイヤーのソリューションが異なるのは当たり前ではないですか。
アメリカの没落
現在の状況を私成りに考察すると。
ここ70年ばかり、打つ手が総て当ってきたアメリカ指導層の戦略が最近立て続けに失敗している。
歴史上このパターンはバックスブリタニカからバックスUSAに移行する初期に酷似している。
だとすれば次に来るのは世界中からのアメリカ資本と米軍の撤収だろう。
しかしここ3世代のバックスUSAに慣れ切った世界の指導層は、その流れに付いて行けず、ただ戸惑うばかりである。
流れ的に言って次の覇権国家は東亜細亜から出るで有ろう、しかしそれはまだ先の話だ。
今はいかに時代の変換期を乗り切るか?
が問題だと思う。
それには国民一人一人のドラスティックな意識改革が必要だ。
備えよ同胞、次代の為に。
御説ごもっともです。世界中にある1京分もあるらしいマネー、世界中の深謀遠慮に長けた人たちが日夜金儲けを考えている。このお金のものすごい大きなうねり、パワーは一国の考えやひとつの集団(陰謀国際金融資本?)がコントロールできるほど生易しいものではないと思っています。したり顔で陰謀論を口にするやつほど信用できない。メルヘンチックな奴ほど陰謀論を好む傾向がありますね。
名無しへ
反論するしないの前に、私の言っていることの1割も理解できていないことが良くわかる低レベルコメントだ。
しかも自分のHNに「さん」をつけて名乗るのは、頭の良い人間のやることではないな。つーかキモイ。
>新自由主義者らしい自己弁護ですね。
私はアメリカ大統領でもアメリカ人でもない。よって自分を弁護しているわけでもない。単に世界経済の事実を述べているだけ。
お前はいったい誰に話かけているのだ?
>金さえ儲ければ人の命がどうなってもいいのか?
どこにそんなことが書いてある?私がいつイラク戦争でアメリカが100%正しかったと言った?日本語の基礎的読解力さえないのか、見えてはいけないものが見えているようだな。
>アメリカがやったことは悪いことばかりじゃないですか。
>グローバリズムがどれくらい貧富の拡大や自然破壊を招いているのかわからないんですか。
お前が日本人であればどこにそんなことを言う資格があるか?
グローバリゼーションの進展によって、世界各地から原料を輸入でき、日本の製鉄業・機械産業が怒涛のように対米輸出をしたおかげで日本全体が豊かになった。
その裏返しとしてピッツバーグやデトロイトは失業者があふれた。
それとも日本は鎖国して江戸時代が今も続いていた方が良かったとでも言うのか。
だったらお前がブログに書き込みをするなんてことも不可能だった。
グローバリゼーションのおかげで自分たちが豊かになってアメリカ人を失業させておいて、逆に日本が新興国からの挑戦を受ける立場になるとグローバリゼーションを否定するというなら、とんだ偽善者だな。
感情的反米主義者というのは狂信者の一種というのが良くわかる。
クマのプータロー さん
>グローバリズムの構図は、カジノのオーナーがアメリカ、胴元がEU、大口プレイヤーが日本とオイルマネーで、その他の国は、ディーラーと繋がったサクラです。オーナーとプレイヤーのソリューションが異なるのは当たり前ではないですか。
日本人の例えノーリターンであってもノーリスクを好んでしまうようなやり方が欧米と違うがゆえに、サブプライム問題で傷が浅かったのだと思いますが、ちょっと複雑な気分です。
火天大有さん
>流れ的に言って次の覇権国家は東亜細亜から出るで有ろう、しかしそれはまだ先の話だ。
今のアメリカがベトナム戦争後のような状態でまた復活するのか、そうでないのか私にはわかりません。
ただアメリカがこのまま没落してしまうと仮定しても、日本はやろうと思えばかなりのことがやれると思うのですが、国家戦略も世界経済の知識も持たず、「人の嫌がることはしない」と国のトップが言っているようでは夢のまた夢ですね。
ななしの経営者さん
>したり顔で陰謀論を口にするやつほど信用できない。メルヘンチックな奴ほど陰謀論を好む傾向がありますね。
うちのコメント欄にも変なのが涌いてますが、メルヘンチックというのも同意ですし、まず言っていることがエセ経済学なんですよね。
こういうのは、あまり勉強しない人がひっかかるものかと思っていたんですが、最近では日本の野党議員にもいるらしいですね。
その野党が政権に一番近いというのですから世も末です。
久しぶりに来ました。すべらしい論陣を張られていてうれしい限りです。ユダヤ陰謀論ってなんで喜ばれるんですかね。ユダヤ陰謀論なんて、論理からしても実態からしても間違っていると思います。経済だけでなく、政治にしても、日本は集団的自衛権の行使などやることもやらずに、テロ支援国家指定解除でアメリカ批判などちゃんちゃらおかしい。
クロフネ殿及びコメントのみなさま。連休中でさぼっていて遅れました。
偶然がどうか不明ですが、日経ビジネスで金本位制の復帰について特集を組んでいます。アメリカが管理通貨制をやめて金本位制に復帰するのではないか、という話です。
1990年代クリントン政権のころに、アメリカ経済が双子の赤字対策の一つとして上げられたと記憶しています。
あの頃よりも今回のほうが、金本位制復活の可能性は上がってるように思えます。
ななしです さん
>ユダヤ陰謀論ってなんで喜ばれるんですかね。
それは、政治・経済の知識が無い者に、アメリカ・ユダヤ陰謀論者が”この世の重大な秘密を解き明かすメソッド”、そして”政治・経済の識者を追い越せるメソッド”を提供してみせるからでしょう。
そのメソッドこそ、世界で起こるすべての重大事件の背後にはアメリカ・ユダヤ金融資本がいるという、非常に単純化・善悪二分論化された”理論”です。
しかし、政治経済の知識が無い人間が何の努力もせずに識者を追い越すメソッドなんて、はじめからどこにも無いわけですが、陰謀論に取り付かれた人間は陰謀論に対する反論を、識者を追い越してしまった自分に対する嫉妬、あるいはユダヤ勢力による秘密を隠しとおすための攻撃と妄想するわけです。
しかも陰謀論者の言うことの一部が事実なので余計始末におえないところがあります。
あとテロ国家指定解除についてですが、アメリカにも国益があるでしょうし、日本がふがいないのも事実ですが、ブッシュ政権が日本に言質を与えた以上やはり裏切りではないかと思っています。
ライス・ヒルの国務省コンビには失望しています。
sdi さん
>日経ビジネスで金本位制の復帰について特集を組んでいます。アメリカが管理通貨制をやめて金本位制に復帰するのではないか、という話です。
そんな話があるとは知りませんでした。情報ありがとうございます。
まだ書店にあるかな。
ただ、アメリカが金本位制に復帰となると、世界から物凄い勢いで流動性がアメリカに吸い込まれ、アメリカからは相当な量の金が流出して大変なことになりそうな気がします。
スムート・ホーリー法やオタワ協定に並ぶ史上最悪の近隣窮乏化政策になるかもしれません。
もしそれでドルへの信頼が回復したとしても、世界全体を巻き込む深刻なデフレ不況と引き換えになりそうですし、そのブーメランはアメリカ自身にも跳ね返ってくるような...
まあ、頭の良い人が発展型金本位制みたいなものを構築するのかもしれませんが、私にはアメリカの金本位制復帰、にわかには信じられないです。