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第11回 民主主義の広め方

  • 2007/08/30(木) 00:50:18

 ブッシュ米大統領が今月22日、ミズーリ州カンザスシティーで行った演説が物議をかもしている。

参考記事 

ざっと読んだかぎりでは、歴史的事実と異なるものがあったり、いらぬ誤解を招きかねない不適切な表現があったりと、問題のあるものであった。

ブッシュ大統領にかぎらず、多くのアメリカ人というのは、日本も含めた外国への関心が薄く、知識も少ないので、こういう認識が出てくるのではないか。

私自身、日米を含む自由主義陣営諸国が、独裁政権の圧制と非人道的迫害行為に苦しむ人たちに救いの手を差し伸べ、そうした悲劇的な人たちを一人でも少なくするために、民主主義を望む人たちに援助を与えることは正しいことだと思っている。

しかしイラクにおいて、アメリカは「民主化のやり方」を間違えてしまったように思う。

なぜ間違えてしまったのかと言えば、同じアジアだからといって高信頼社会の日本と低信頼社会のイラクをごっちゃにしてしまい、日本の歴史や文化についても、不正確な知識しかアメリカには無いからではないだろうか。

近年アメリカ政府は、日本専門家・知日派スタッフをどんどん減らしてきたが、その重いツケをイラクで払っているように思う。

 なぜ日本が民主主義国家として成功し、イラクでは失敗しているのか、というのは多くの人にとって興味深いテーマであろうし、今後「世界に民主主義を広めていく」時に、日本の歴史から学ぶことは非常に多いだろう。

アメリカには、日本が第二次大戦に負けて初めて民主化したと誤解している人も多いようだが、それは事実ではない。

19世紀後半に、日本は将軍による独裁体制から西欧的な近代国家へと転換したわけだが、1870年代に早くも、選挙制度の導入と国会の開設を求める民主化運動が起こった。(いわゆる自由民権運動)

こうした動きは政府から弾圧の対象となったが、民主化の動きには抗えず、1889年に大日本帝国憲法が発布され、翌年には15円以上を納税した25歳以上の男子による選挙によって、日本初の国会が開かれた。

これによって日本は、アジア初の憲法と国会を持つ近代的立憲君主国家となったのであって、不完全ながらも、日本の民主主義はヨチヨチ歩きを始めたのである。

同じ時期のアジアに、日本のような民主制度を持った国が一つも無かったことは、よく覚えておくべきである。

日本以外のアジアには、欧米の植民地か独裁国家・専制王朝しかなかったし、ヨーロッパでも、ロシアが国会と憲法を持つのは、日本より15年以上遅れた1906年である。

 だが、これで日本の民主化への努力が終わったわけではなく、官僚による集団独裁体制を維持したい”超然主義派”と、選挙で選ばれた政党勢力との権力闘争は続いた。

当初は、官僚や貴族が直接首相に就任して組閣していた(いわゆる超然内閣)が、これに対する批判が高まり(護憲運動)、1924年の第二次護憲運動で民主派が勝利をおさめて以後、政党の総裁が内閣を組織するようになった。

翌年には普通選挙法が成立し、25歳以上のすべての男子に選挙権が与えられたのである。

(1918年の第四回選挙法改正まで、イギリスでもすべての成年男子に選挙権があったわけではなかった。1918年以降、すべての成年男子と30歳以上の女性に選挙権が与えられ、1928年に21歳以上のすべての男女に選挙権が与えられた)

この”大正デモクラシー”による政党政治は、1932年に軍人官僚が起こした軍事クーデタ(五・一五事件)で打倒されるまで続いた。

 不完全ながらも、日本がアジア初の民主国家になれたのは、アジアでほぼ唯一、成熟した封建制度を経験していたことが大きかったと考えている。

20世紀初めの時点で、産業革命を達成して近代市民社会に到達していたのは、文明の衝突で有名なハンチントンの分類にしたがえば(西欧・スラブ・ラテン文明を含めた)欧米キリスト教文明と日本文明だけであった。

そして両文明だけが、狭義の封建制度を経験している。

厳しい競争社会であり分権的政治体制としての封建制度を経験した文明だけが、19世紀までに近代市民社会に到達できたのではなかったかと考えている。

関連記事・近代日本の対朝鮮外交 (その2)



 しかし、最初から民主主義という概念が日本にあったわけではないし、多くの日本人がそれを理解していたわけでもなかった。

独裁政権だったからといって、欧米諸国が軍艦を派遣し大砲で徳川幕府を倒して、「さあ、明日から民主主義をやってみろ」といっても、うまくいったかどうかは非常に疑わしい。

東洋には「衣食足りて礼節を知る」という言葉があるが、国民が豊かになり生活が安定してはじめて、政治を考えたり民主化を求めたりする余裕が出てくるものである。

1868年に明治政府が発足し、日本が近代国家としてスタートした時は、天皇は象徴的存在で、実質的には官僚による集団独裁体制だった。

明治政府は、内乱を鎮圧して治安を安定させ、国家経済をひっぱっていく産業を決定して、それに集中的に資源を配分した。(殖産興業)

明治政府は、こうして国家・国民を豊かにしていくとともに、民主化を求める国民の声に対して、憲法の制定・国会の開設・選挙の実施と、段階的に民主化をすすめていった。

1925年の普通選挙法成立と政党内閣の本格的開始を、戦前日本の一応の民主化達成として見ると、1868年に明治政府がスタートしてから、それまで民主主義の土壌がほとんど無かった日本が民主化するまで、57年かかっているわけである。

 この明治政府こそ、いわゆる開発独裁モデルの先駆者であり、日本の”植民地”だった韓国も台湾も、明治政府のやり方を取り入れて最終的に民主化を果たし、タイやインドネシアなどASEAN諸国がそれに続いた。

アジアに民主国家が誕生したのはこれが大きかった。

アジア各国は、日本など海外から資本と技術を導入し、輸出主導型で国を豊かにし、それが国民の文化的水準を向上させ、民主主義の担い手を育てていった。

中国も経済発展のやり方だけ、明治政府のやり方を”つまみ食い”している。

 民主主義の土壌が無いアジアやアフリカ諸国に、いきなり民主主義をやれと言っても無理な話で、「えらそうに説教を垂れるな」と反発されるのがオチだろう。

ましてや、独裁政権だからといっていきなり打倒してしまうと、イラクのように無秩序と大混乱を引き起こしかねない。

民主主義を広めるためには、まずその国の国民を豊かにしなければならず、その国を豊かにするためには、治安の安定が欠かせない。

開発独裁モデルの成功例が示すように、先進自由主義諸国が、その国の治安安定のため、当分の間は独裁体制を認めることも必要悪だと思う。

つづく


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管理人様の記事はいつも勉強になり、自分の知識の整理に役立ててます。また、HPで紹介されている本も読ませて頂いてます。これからも、冷静でわかりやすい解説を期待しております。

  • 投稿者: fuyuneko
  • 2007/08/30(木) 09:16:05
  • [編集]

止むを得ない

皆さんも既にお気づきでしょうが、現在我が国の上層部又は管理層に居る人間が官民問わずボウッとしています。何を言っても反応が鈍いと言うかトンチンカンと言うか、何か不思議な電波に操られているような、一時はアメリカや二ダーの催眠術説に乗りましたが、昨日口論した役人はそれ程上の人間でも無いのに数種類のシチュエーションで説明しても、全く要領を得ませんでした。先日相対した東京地裁の裁判官は日本語が判らない様子でした。前置きが長く成りましたが、そのような我が国の官僚や政治家と相対してきた諸外国の皆さんは日本が相手なら気を使う事無くどんな馬鹿な発言をしても許されると思っているのでしょう。多くの日本人が何故この様にボウッとした呆けた状態に成っているのか私にも原因は判りませんが、何か空恐ろしいものを感じます。二ダーの増長増殖や反日マスコミ電波が関連している様な気がしますが確証が無いので、尚アメリカの国家性と民主主義という制度に関する見解は初めてクロフネさんと大きな相違が出ましたのでここでは書きません。クロフネさんの努力と足跡は私には真似の出来ない功績を残しているからです。表現を間違えてその部分を否定した様に取られても困るので。我が国と付き合う国は取り敢えずは友好的な国ならば(朝鮮を除く)多少政治体制が独裁でも関係無いとは思います、我が国と付き合う中で我が国の和の思想や武士道が自然な形で浸透していけば必ず相手国の民度も向上し世界平和(大きく出ました)に繋がるものと信じます。ではこれからも頑張ってください。

  • 投稿者: 火天大有
  • 2007/08/30(木) 20:25:17
  • [編集]

fuyunekoさん

ご声援ありがとうございます。
日本がよりよい国となるよう、微力ながらボチボチ記事を更新していきたいと思います。


火天大有さん

>多くの日本人が何故この様にボウッとした呆けた状態に成っているのか私にも原因は判りませんが、何か空恐ろしいものを感じます。

私も、現代日本人に生存本能はあるのかと思うことも、しばしばありますね。

  • 投稿者: クロフネ@管理人
  • 2007/08/30(木) 23:16:36
  • [編集]

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  • 投稿者: -
  • 2007/08/31(金) 16:45:29
  • [編集]

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