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中国軍の偵察機が九州~沖縄を電子偵察
- 2005/09/13(火) 23:15:48
これまで存在を知られていなかった中国軍の電子戦データ収集機とみられる航空機が8月中旬から下旬ごろ、2回にわたって九州南部や南西諸島西方の東シナ海の公海上空で活動していたことが分かった。
http://headlines.yahoo.co.jp/
hl?a=20050913-00000061-kyodo-int
さて今日のコラムは、中国軍の電子偵察機(電子戦データ収集機)が、九州や沖縄付近の海上で何をやっていたのか、それがどういう意味をもつのかについて述べたいと思う。
もちろん記事にあるように「テストや訓練」といったノンキな話ではない。
よって今回は、軍事的専門技術の話がやや多くなるかと思うが、最後までおつきあい願いたい。
今回初めて確認されたという中国軍の偵察機が、何をしていたかについてだが、画像でもあれば推測もしやすくなるが、ネットでそれを見つける事ができなかったので、電子戦データ収集機という言葉から、それを推測する。
偵察機というと、上空からカメラで地上の敵基地などを撮影して、フィルムを持ちかえって分析するようなミッションを想像される方もいると思うが、電子偵察機の本来のミッションは、それとは違う。
電子偵察機は敵の基地や艦艇、防空レーダーから出る、あらゆる種類の電波を収集し、解析するのがその任務である。
中国軍は、このような目的に使用する電子偵察機TU-154MDを、およそ6機保有している事は、以前から知られていた。
TU-154MD 胴体下部のふくらみが電波を収集するアンテナ
TU-154MD(別タイプ)胴体下部のふくらみは開口合成レーダーとみられる
TU-154MDは機体をロシアから輸入し、電波収集のためのアンテナや各種電波を解析するための機器を国産したか、ロシア・イスラエル・フランスのいずれかから輸入してとりつけて完成させたものであろう。
今回はTU-154MDではなくて、別の新型らしく、中国軍がこのようなハイテク情報戦分野でも、軍備拡張を急いでいる事がわかる。
今回の中国軍の新型電子偵察機も、おそらくは九州から沖縄にかけての自衛隊や在日米軍の基地や防空レーダーなどから出る電波を収集する目的で、日本に接近してきたものと思われる。
それでは何故このようなことをするのか、その意味についてだが、中国が日本に侵攻する場合、沖縄や九州に配置された防空レーダーサイトや、自衛隊、在日米軍の部隊間の通信などに、どのような種類の電波を使用しているかを知っておく事が、必要不可欠だからである。
現代戦では、陸・海よりも空軍力がより重視される。
なぜなら、制空権をにぎった方が、陸・海の戦いでも優位に立つ事が、湾岸戦争など最近の戦争の教訓から、ますます明らかになってきたからで、
日本を侵略する場合、中国がまず狙うのは、日本の防空網(防空レーダーサイト・防空ミサイル部隊・防空戦闘機部隊)に壊滅的な打撃を与え、日本領空の制空権をにぎることである。
制空権さえにぎる事ができれば、海上での艦艇同士の戦いでも、日本の領土に中国軍海兵隊を上陸させて陸上戦を行っても、戦いを有利に進められるのである。
よって、中国の日本攻撃の第一波は、電子戦術機によるジャミング(電波妨害)によって、日本の防空レーダーサイトに”目つぶし”をかけ、自衛隊の部隊間の通信を遮断して、指揮命令系統を混乱させ、各部隊を孤立させるような作戦になるが、
その場合、自衛隊の防空レーダーや部隊間通信に、どのような種類の電波を使用しているかわかっていなければ、ジャミングをかけることができない。
だから平時から、電子偵察機を日本に接近させて、自衛隊や在日米軍の電波情報を集めておく必要があるのである。
また、日本が使用している防空レーダーサイトや”パトリオット”のような防空ミサイルの対空レーダーの電波情報がわかっていれば、対レーダー・ミサイルを使用する事ができる。
対レーダー・ミサイルは、パッシブ・レーダー・ホーミングといって、ミサイルに敵のレーダーが使用している電波情報を入力してやることで、発射すれば、その電波の発信源にむかって自動的に飛んでいくという誘導システムを備えた、ミサイルである。
中国はロシアから輸入したスホーイ30MKK戦闘爆撃機に搭載できるKH31P対レーダーミサイル(NATOコード名 AS17”クリプトン”:最大射程160~200km)を保有していると言われる。
前述の第一波攻撃で、中国の電子戦術機が”目つぶし”をかけるのと平行して、この対レーダーミサイルを使用して、日本の防空レーダーサイトやE-767空中早期警戒管制機、あるいはパトリオット防空ミサイル部隊、イージス艦などを破壊する。
さらに、スホーイ30MKK戦闘爆撃機や紅鳥(HN)巡航ミサイルなどを使った先制攻撃で、沖縄や九州の自衛隊基地を破壊して、日本の戦闘機が迎撃に飛び上がる前に、全滅させてしまえば、沖縄・九州の空は、中国のものになる。
日本の制空権を握ってしまえば、陸上自衛隊の基地や海上自衛隊の軍港など、日本の重要な戦略目標を好きなように空爆できるし、中国軍海兵隊を任意の島に上陸させるのも容易になるというわけだ。
もちろん、これは最悪のシナリオが現実のものとなった場合の話であって、こちらも指をくわえてポケーッとしているわけではない。
自衛隊や在日米軍は、このような中国軍の脅威に対処できるよう、日々の訓練に励んでいるはずである。
ただ、中国がどういう意図を持って、電子偵察機を日本に接近させたのか、皆さんによく理解してもらうために最悪のシナリオを紹介した。
日本人の戦争体験は第二次大戦で止まっており、平和ボケが懸念される。
現代戦は、情報戦・ハイテク戦の分野での進歩が著しく、もはや60年前のように、B29のような巨大な爆撃機がいきなり日本にやってきて爆弾を落としていくような戦争の時代は、とっくに過ぎている事を肝に銘じて欲しい。
特に、防衛庁長官や陸海空幕僚長など、文官・武官の別なく、安全保障担当の指導者は、現代の情報戦・ハイテク戦を精力的に研究し、タブーを設けず、必要な装備・兵器は実戦部隊にとりいれ、現代の情報戦・ハイテク戦にいかようにも対処できるようにしておかなければならない。
日本はアメリカというハイテク戦のすばらしいお手本と共に歩んでいるのだから、なおさらである。
ところで、まさか日本の安全保障部門のトップである防衛庁長官が、ハイテク情報戦について、クロフネ程度の基礎的な知識さえ持ち合わせていない、なぁんて事は無いですよね?
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