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宇宙(そら)をめぐる熱き戦い

  • 2005/06/30(木) 23:58:11

 前回のコラムで、北朝鮮への旧ソ連製巡航ミサイル流出疑惑についてとりあげたところ、「たとえ北朝鮮が巡航ミサイルを手に入れたところで、ミサイルを誘導するGPSの電波をアメリカに止められればオシマイだから、おおげさに心配する必要は無い。」という趣旨のトラックバックを頂いた。

北朝鮮に流出したとされる巡航ミサイル”Kh55”は、前回コラムで述べたとおり、目標までの地形・距離などを記憶させておいて、誘導する方式(巡航ミサイルの初期のタイプはこの方式。トマホークも初期型はそうだった)なのでGPSによる電波が受けられなくとも実戦に使用可能である。

(そもそもアメリカと鋭く対立していた旧ソ連が、アメリカが支配するGPSからの電波に依存しなければ誘導できないミサイルを開発しようなどと考えるワケがない)

イラク戦争においても、アメリカ軍が使用したトマホーク巡航ミサイルの全てがGPS誘導では無かったらしい。

しかもミサイルに核や化学・生物兵器弾頭を装着すれば、それほど高い命中精度は必要としない。

ノドン・テポドン弾道ミサイルが、日米が開発中のMD(ミサイル防衛)システムに封じられた場合の対抗策として、北朝鮮が巡航ミサイルに手を出したのならば、この可能性は充分考えられる。

 もっとも、GPSのような測位航法衛星から攻撃目標とミサイル自身の位置情報が得られれば、ミサイルの命中精度が飛躍的に高まるので、北朝鮮としてもどうせ手に入れるなら、測位航法衛星による誘導援助が得られるタイプが欲しいだろう。

その点を軍事専門誌であるジェーンズ・ディフェンス・ウイークリーも指摘していて、ウクライナから中国とイランに流出した”Kh55”は、ロシアが測位航法衛星による誘導援助が得られるよう改良したタイプの可能性もあると伝え、

そうなってくると北朝鮮が手に入れようとしたのは、より命中精度が高いミサイルと言うことになる。

もちろん改良型”Kh55”が測位・航法データを受け取るのはGPSではなく、ロシア版GPSとも言うべき”GLONASS”と推測される。

(もしくはGPSをメインにバックアップとしてGLONASSを使用するのかもしれない)

もし北朝鮮のGLONASS利用をロシアが黙認すれば、アメリカが反対しても北朝鮮はこのタイプの巡航ミサイルを使用できることになる。

 GLONASSが出てきたところで今回のコラムの本題に入るが、カーナビや携帯電話などへの利用で我々にとって身近になってきた測位航法衛星だが、もともとは、陸軍地上部隊や戦略ミサイル原潜の現在位置把握、巡航ミサイルやJDAMのような精密誘導兵器の命中精度の向上といった軍事目的が主であった。

民生用ならともかく軍事目的となると、このようなシステムを外国に頼ることは、国家の外交・安保政策の自立性を著しく損ねる。

である以上、自立した外交安保政策を持つ国としての地位を世界に築こうとすれば、当然自前のシステムを保有することが必要となってくる。

宇宙(そら)を制するものが、世界を制するという言葉もあながち大げさとは言えないだろう。

測位航法衛星システムを保有しているのは何もGPSを運用するアメリカだけではない。 前述のGLONASSを運用するロシアもいるし、”北斗”を打ち上げた中国もそうである。

EUは”ガリレオ”というシステムの計画をもち、2008年からの運用を目指している。

ガリレオにはロシア・中国なども参加している。いずれもアメリカの一極化世界に反対する国・地域ばかりだ。 これにインド・カナダ・韓国なども加わっている。

ここで各システムの概要をあげておく。

GPS

運用-米・国防総省
衛星数-29(8基は予備)
測位精度-民間30m以下・軍用3m以下

GLONASS

運用-露・宇宙軍
衛星数-8(本来は24基だが、予算不足?等で代替衛星を打ち上げられず)
測位精度-100m以下

ガリレオ(2008年運用開始予定)

運用-欧州宇宙機関
衛星数-30(計画)
測位精度-数m以下(計画)


北斗

運用-中国国家航天局
衛星数-3(計画では6基になる予定)
測位精度-20~100m(目標値)


 この分野の先駆けはアメリカで、1964年から実運用に入ったNNSSというシステムを保有し、78年から試験運用に入ったGPSにアップグレードを重ねて、現在に至っている。

冷戦中にアメリカに対抗するため、70年代に旧ソ連がGLONASSシステムを開発し、2003年になって中国が北斗の3基目の衛星の打ち上げに成功した。

EUは2000年にガリレオ計画を発表したが、この分野の一極支配をもくろむアメリカが猛烈に反発し、一時は資金難もあって頓挫しかかった。

それを救ったのは中国やインドで、ガリレオは2008年を目標に、運用開始のための準備が進められている。 

「わが日本はどうなんだ?」という声が聞こえてきそうだが、日本は準天頂衛星というシステムを計画しているが、利用できる範囲は日本周辺からオーストラリアあたりまでと限定的である。

しかしながら今現在、日本自前のシステムはまだ何も無いというのが現実である。(EUからガリレオへの参加を打診されたが、アメリカに気兼ねして断ったらしい)

 日本と中国の決定的な違いは正にここにある。

中国の”北斗”は、GPSに比べると衛星数が少ないので、利用範囲は中国領土周辺に限られるのかもしれないし、測位精度も低いことが推測されるが、それでも自前でこのようなシステムを保有する意味は大きい。(”北斗”はGPSとは方式が違うらしい)

台湾や日本に向けられる短・中距離弾道ミサイルや巡航ミサイルの誘導を助けて、命中精度を飛躍的に高めることができるからである。

しかも、たとえアメリカやEUが中国の戦争遂行に反対して、GPSやガリレオを中国軍が利用できないようにしても、悪影響を最小限に食い止められる。

中国は今後、ガリレオ計画に参加することによって得られたEUの持つ高度な技術をとりこんで、”北斗”のさらなる性能向上、あるいはその補完をめざすであろう。

 この宇宙(そら)をめぐる熱いバトルをみれば、中国の国家戦略がはっきりとみえてくる。

中国が狙っているのは、アメリカやEUを含め他国に自国の外交政策を邪魔させないだけのパワーを持つ超大国になる事である。
つまり「俺達のやりたいことは全てやらせてもらう」という事だ。


もし中国が独裁体制のままそのような超大国になれば、各国とのあつれきは拡大し、世界にとって大きな不安定要因となりかねない。

 一方日本は測位衛星システムを利用することには非常に熱心で、カーナビ・船舶用ナビから携帯電話まで様々な商品が開発されてきたが、
システムそのものを構築するという点では、世界から大きく出遅れてしまった。

その点で世界第二位の経済大国でありながら、どうも日本の指導者達は近視眼的で世界規模での国家戦略の構想力に欠ける。

日本の外交・安保政策に独自性を持たせたいのであれば、準天頂衛星でもさしあたって充分であるから、自前の測位航法衛星システムの構築が欠かせない。

そしてタブーを設けず、民間とともに自衛隊にも使用させて、周辺国との軍事バランスを崩さない努力が求められよう。


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参考

GPS と電波航法システム

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日本がとるべき世界戦略(その2)

中国はどこへ向かおうとしているのか?

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この記事に対するコメント

欲しいですね、自前の衛星。モタモタしてるうちに周辺国がピンポイントで日本のどこかを狙えるようになって、言いなりにならなくちゃならない状況は避けたいです。
日本のお金が中国に露骨に注ぎ込まれてるのに、形を変えてまだまだ続くんですよね、きっと。

  • 投稿者: コリコリ
  • 2005/07/01(金) 00:45:18
  • [編集]

コリコリさん

>日本のお金が中国に露骨に注ぎ込まれてるのに...

これさえなければ、まだマシなのですが。

ODAやら遺棄化学兵器の処理といった名目で、自らを敵視する国にカネを注ぎ込むマヌケな日本。

私が中国人だったら「日本ってホントにバカだな」と思うでしょうね

ところが援助している当の本人達は、「日中友好につながる」と本気で思っているところが救いがたいです。

実際のところは「日本ってバカだな」という侮蔑感情が、ますます反日感情を増大させる結果となっているのに...

  • 投稿者: クロフネ@管理人
  • 2005/07/02(土) 22:57:10
  • [編集]

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