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第19回 中国の外交テクニック(その4)

  • 2005/05/31(火) 23:39:53

5.原則問題での合意への固執

 中国は交渉において、ある種の”原則”を定めて、それを交渉相手国に受け入れるよう執拗に要求する。

そして一旦交渉相手国が、その”原則”を受け入れると、中国は将来にわたってそれを臨機応変に活用し、交渉相手国の外交の自由を制限しようとする。

中国がこだわる”原則”とは、あたかも交渉相手国をぐるりと取り囲む大きな”網”であり、ふだんはその網の中に相手国を泳がせておくが、ひとたび相手国が中国の国益に反する行動をとるときは、その”網”をしぼって、相手国をがんじがらめにしようとするのである。

相手国との外交の懸案ひとつひとつに小さな”網”を用意して、いちいち同意や言質をとって相手国を拘束するより、効率が良いと思われる。

 そのような”原則”の代表例としては、1970年代の米中関係の正常化交渉のとき、アメリカに求めた”ひとつの中国の原則”がある。

”ひとつの中国の原則”とはもちろん、台湾は中国の不可分の領土であり、大陸の中華人民共和国が中国を代表する唯一の正統政権であるというものである。

どういう意図があったのか、はたまた北京ダックの晩餐の後で満腹だったのか定かではないが、対中交渉を担当したキッシンジャー国務長官がこの”ひとつの中国の原則”を大筋で認めてしまい、それ以降長きにわたって、アメリカの対中国外交・対台湾外交に制限を与える事になり、”キッシンジャーの呪い”と呼ばれる事になった。

 中国が日本に飲ませた”原則”には、”日中共同声明の原則”というものがある。

これも1972年の日中国交正常化のときに合意されたもので、”中国はひとつ”であること、日中はお互い内政干渉をしないこと、覇権主義をとらないことが、定められた。

 今年(2005年)、中国各地でおこった反日暴動によって日中関係は最悪の状態となり、それをうけて四月にジャカルタで開催された日中首脳会談で、中国側は5つの主張を発表した。

その一番目には「日中共同声明の原則を日本が尊重すること」という一文があったが、これは「反日暴動の報復として日本が中国を捨てて、台湾との政治・外交関係を復活させる」ようなことは中国は許さないという意味である。

この”原則”は他にも、台湾の政治家が日本を訪問したがっているときや、台湾が国際機関に加盟したくて日本に支援を求めてきた場合などに、中国が台湾側を妨害し、日本の対台湾外交のフリーハンドを奪うために幅広く使える。

ただ、これらの”原則”は諸刃の剣であり、使い方によっては中国外交の自由をも制限するものとなりかねないが、中国は”原則”に対して「同意した相手国は守らなくてはならないが、中国自身は守らなくても良い」という二重基準を適用しがちである。

6.道義の優位性

 中国は自らを「絶対にあやまちを犯さない被害者」、交渉相手国を「間違いだらけの加害者」と位置付け、その”道義の優位性”をみずからの国民に教育して国内世論を形成するとともに、相手国の交渉担当者・国民に加害者意識を植え付け、交渉相手国の人々の理性ではなく、人間が生まれながらに持ち、コントロールが困難な感情部分に働きかけて、中国に対する強い罪悪感をいだかせようとする。

また広く国際社会に対して”被害者の中国”と”加害者の相手国”という構図をアピールして同情を誘う。

そして中国国民と中国へ同情する国際社会の交渉相手国に対する圧力を援護射撃とし、交渉相手が抱いた中国への罪悪感と孤立感を最大限に利用して相手に譲歩をせまり、それによって交渉を中国にとって有利に運ぼうとするのである。

 中国政府が歴史上中国がおかした侵略をほとんど教えないか、「中国を防衛するための戦争」と歪曲して国民に教育し、中国を侵略しておいて一度も謝罪や賠償をしてこなかったイギリス・ロシア・フランス・ドイツの姿勢を見逃して問題にせず、

繰り返し謝罪を表明してきた日本だけを”加害者”として執拗に攻撃し、国際社会に絶対正義の被害者・中国と絶対悪の加害者・日本の構図を必死にアピールしてきたことは、

市民レベルではともかく、中国の外交担当者にとっては日中交渉を有利に運ぶための外交テクニックであったことを証明している。

もし純粋に”侵略という過去の歴史”が理由であるならば、侵略して一度も謝罪していないイギリスやロシア・フランスは問題なくて、何度も謝罪している日本だけを「謝罪が足りない」と攻撃する中国のやり方は、できの悪いジョークそのものである。

 それでは中国の失策で道義の優位性が失われた場合、つまり中国が悪・加害者になってしまった場合はどうするか?

中国で文化大革命の嵐が吹き荒れる真っ最中だった1967年8月22日に、紅衛兵が北京のイギリス代理大使館を襲って敷地内に侵入し、駐中イギリス代理大使が紅衛兵に殴打されるという事件が起こった。

新華社通信など中国官営マスコミは、紅衛兵の暴力行為を正当化するニュースを流したが、国際社会における中国のイメージダウンは避けられなかった。

その直後の8月29日、”ポートランド街の攻防”と呼ばれる奇怪な事件がロンドンで起こる。

ポートランド街にある在英中国大使館が突如東洋人の集団に襲撃され、中国大使館を警備していたイギリスの警官と壮絶な格闘戦となったのである。

これについてサッチャー首相の外交顧問でイギリス外務省の中国専門家であったサー・パーシー・クラドックは彼の回顧録でこう述べている。

「この奇怪な事件がはじめから中国側の演出によるものであることは疑いない。

彼らはイギリスの”暴行”をデッチあげることによって自分たちの野蛮な行為(北京のイギリス大使館が襲われたこと)を正当化し、しかも彼らが最も得意とする”道義的優位性”に立とうと企図したのである。」


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呉副首相の帰国について

いつも興味深く読ませていただいています。
中国の外交テクニックが卓越したものであるとの認識は、従来私も持っていましたが、呉副首相のドタキャン帰国には、その認識とは異なるものを感じますのでご意見をおうかがいいたしたいと存じます。
今回のドタキャンは、次のように「外交」とは呼べない要素もあると思われるのでその点が疑問なのです。
1.ヒステリックな反応であり、外交ではない。
2.小泉首相から「干渉するな」という言葉を言われた場合の責任問題を回避するために、呉副首相が逃げ帰ったと認識される場合がある。

いずれにしても、外交大国としてはふさわしくない出来事のような気がするのです。もし、日本の対応が中国のこのような振る舞いを呼び起こしたのだとしたら、日本の外交も向上したのではないでしょうか。
ご意見をご教示いただきたくお願い申し上げます。

  • 投稿者: sam
  • 2005/06/01(水) 12:58:06
  • [編集]

>呉副首相の帰国について

 はじめまして、samさん。

 私も呉副首相のドタキャン事件の真相については、確実な情報がありませんので、あくまでも私の推測にもとづく、意見を述べたいと思います。

結論から申し上げれば、中国側は日本の真意が読めず、混乱しているのではないでしょうか。

中国での反日暴動からはじまった、日中関係の悪化を中国側は「過去を反省しない日本」対「正義の被害者・中国」の対立であると国際社会にアピールして、それによって反日暴動の正当化と靖国参拝の中止を含む日本側の全面降伏を狙ったと思われます。

しかし、少なくとも欧米では、中国の反日暴動を非難する論調も多く、国際世論を100%中国の味方につけることには失敗し、この誤算に中国はかなり焦ったことでしょう。

ところがジャカルタでの”謝罪演説”という”敵失”と日中首脳会談での中国側の五つの主張の受け入れによって、中国は小泉首相が”完全屈服”したと受け取ったわけです。

しかし帰国してから小泉首相が靖国参拝を示唆する、町村外相が小泉首相が受け入れたはずの五つの主張に、まっこうから反対する日米安保適用による台湾防衛を表明するなどして、中国は完全に裏切られます。

かと思えば、中国新幹線にODAを投入する話がでたりと、”アメとムチ”の外交セオリーをまったく無視するような日本の対応に、日本側の真意が全く読めなくなっているのではないでしょうか。

 そのような状況で呉副首相が来日したわけですが、おそらく彼女のミッションは、反日暴動で冷え込みが懸念された日本側の対中投資や外貨を落としてくれる訪中日本人観光客の回復にあったと思います。

中国が日本に望むものはカネ(投資)・技術であり、日本が台湾と政治的にヨリを戻さないことです。

おそらく彼女の来日によってそれらの大半が確保されたのでしょう、あとは日本側の真意が読めないという高リスクの状況下ですから「小泉首相になにをされるかわからない」と考え、それを避けるために、日本からオサラバしたのではないでしょうか。 つまり中国の深読みのし過ぎ・疑心暗鬼からの失策ではないかと思うのです。

 もしあのままドタキャンが無かったとしても、そして小泉首相から「靖国にいかない」という確約が取れなかったとしても私は中国が失うものは無かったような気がします。

最後に日本外交への評価ですが、もちろん呉副首相と会談して変な言質をとられるよりはよっぽどキャンセルの方がマシですが、

キャンセルによって日本外交に何かプラスになったことは無く、依然、ウィーン条約違反の中国から反日暴動の謝罪も賠償もとれていないわけですし、教科書・靖国など中国による内政干渉や東シナ海でのガス田問題など実利面でまったく前進が無い状態です。

ですから、私はまだ日本外交に合格点をあげるわけにはいきません。

チャーチルの言葉をひくまでも無く、

「外交とはお愛想を言う為ではなく、便宜を獲得するためにある」のですから。

  • 投稿者: クロフネ@管理人
  • 2005/06/01(水) 21:23:41
  • [編集]

 日本が中国の悪行の事実を世界中に公表すれば道徳的優位性はなくなるのではないのでしょうか。やらないのは何か理由があるからなのか、やってるけど日本人にはあまりしられていないのか、どっちなのでしょうか

  • 投稿者: ソラフネ
  • 2007/11/25(日) 14:23:31
  • [編集]

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