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指導者としての覚悟のなさが招いた災厄
- 2011/04/10(日) 22:10:09
3月11日に発生した東日本大震災とそれによる巨大津波は福島県にある原子力発電所を襲い、冷却システムを失った原子炉は次々と水素爆発を起こし、放射性物質が広範囲に流出した。
そして今なお原発からの放射能封じ込め作業は続いており、予断を許さない状況だ。
今回の大震災は、地震・津波の被害も甚大であったが原発事故が発生したことも余計被害を拡大させた。
原発の事故が発生して政府や東京電力がどう対応したかについては、毎日のこのドキュメント記事がいちばん詳しいのではないか。
参考記事・東電、ベント着手遅れ 首相「おれが話す」
参考記事・初動遅れ、連鎖 情報共有、失敗(その1)
参考記事・大震災:初動遅れ、連鎖 情報共有、失敗(その2止)
この記事を読むかぎりでは原発事故当初から、菅政権と東京電力の間で責任のなすりあいが起こっていたようにしか見えない。
だが、そもそも菅政権と東京電力との間で責任のなすりあいが起こること自体がおかしい。
なぜなら原発事業者である東電を指導監督する立場にあるのが政府・経産省であり、日本政府と一民間企業が”対等な立場”で責任のなすりあいが起こること自体がまったく理解不能だ。
東電としては原発一基に何千億円もの投資をしてきており廃炉にすればそれがパーになるだけでなく、首都圏への電力供給に大きな支障がでて大規模停電が発生すれば、東電の責任問題になるかもしれない。
できるだけ廃炉は避けたいと考えるのは民間企業としては無理もないことだろう。
しかしメルトダウンが起こって原発から外部へ大量の放射能が漏れ出せば、もはや一民間企業の手におえる事態ではなくなることは火を見るより明らかだ。
廃炉より被害は大きくなる。
国家全体の利益を考え、政府の責任で廃炉覚悟で原発から外部への放射能漏れを防止することを最優先にさせるか、それとも別の道をとるのか、それを判断するのは日本の最高指導者・菅首相の仕事である。
(もちろん取るべき道は前者しかないと思うが)
一民間企業に国家全体の利益を考えて大局的な判断を下せというのは無理な話だろう。
だからこそ原子力災害特別措置法は、”原子力災害対策本部長”たる首相に強い権限を与え、経産相を通じて原発事業者に原子力災害を防止するために必要な措置を講じるよう命ずることができるとしている。
上記の記事によると、大震災当日の16時すぎには東電から「15条事態」という通報が菅政権にもたらされたとある。
そこで速やかに菅首相が”原子力緊急事態宣言”をして原子力災害対策本部を設置、その本部長である菅首相が原発災害の最高責任者として指揮をとるべきだったのではないだろうか。
東電に対しても、「首相の私が責任を取る。メルトダウンと原発から外部への大量の放射性物質飛散という最悪の事態発生を阻止することを最優先に考え、廃炉も辞さず自衛隊・消防・米軍の協力と考えられる全ての手段を総動員する。東電も全面的に協力して欲しい」と命ずるべきだった。
そうすれば戦力の小出し投入という愚は避けられ、「首相が責任を取るからあらゆる手段を総動員しろ」と言われれば東電も迷いが吹っ切れて、事故の初期から最大限の戦力を投入して被害をもっと少なく出来たかもしれない。
初動から廃炉覚悟でホウ酸や海水の注入を含む冷却作業に取りかかっておけば、それを実行する上での障害とその対策ももっと早く判明していたかもしれない。
ところがそうはならなかった。
東電から「15条事態」という通報が11日16時すぎにあってから菅首相が原子力災害対策本部を19時に立ち上げるまで、3時間近くかかっている。
原発事故を最小限の被害に食い止めるための初動で、大切な3時間を菅政権は無駄にしてしまった。
その間福島第一原発の冷却システムが津波で壊滅し、原子炉内の圧力が異常に上昇していることがわかった。
原子炉格納容器の破損という最悪の事態を防止するため弁を開放して水蒸気を逃がす”ベント”が必要だったが、記事にあるように「一企業には重すぎる決断だ」と東電はベントに乗り気ではない。
ベントによって放出される水蒸気には放射性物質が含まれており、人為的な放射性物質の大気への放出に国民から非難が殺到するのを東電が恐れた可能性がある。
しかしメルトダウンという最悪の事態を防ぐためにベントが避けられなかったのであれば、原子力災害特措法を根拠として菅首相が「私が責任を持つから速やかにベントを実施しろ」と命じることで、このような無用な混乱は避けられたはずだ。
国民も東電も最悪の事態を避けるためにそれを受け入れざるをえないだろう。
菅首相や海江田経産相、班目原子力安全委員長がベントを実施するべきと判断を下したのが11日23時、ところが菅政権が原子力災害特措法に基づき、東電にベントをするよう命令したのは翌12日の朝7時前だった。
この間の8時間、海江田経産相が「東電の判断でベントをすると報告があった」と言えば、東電側は「ベント実施の判断で進めるべしというような国の意見もある」と責任をなすりあっていた。
東電上層部にも問題はあったが、菅首相の最高責任者としての覚悟の無さと、原発事故の全責任を東電に負わせようとした逃げの姿勢が生んだ混乱だろう。
早朝6時にはベントが実施されないことに苛立った菅首相がヘリで直接福島第一原発に乗り込むという、とんでもない失策も発生している。
結局、朝7時前に菅首相が原災特措法に基づいて東電にベントを命じ、ようやくこの原発災害の指揮官が誰であるのか責任の所在がどこにあるのかが明らかとなる。(もちろん菅首相だ)
しかし停電で弁が開かず、ベントをするためには手動で弁を開く必要があった。
菅政権がベントが必要と判断を下してから11時間近くたった10時17分、ようやくベント作業に着手し、蒸気の排出が始まったのが14時30分すぎでその1時間後に1号機の原子炉建屋が水素爆発で吹き飛び、放射性物質が飛散した。
14日に3号機も水素爆発、15日早朝には大震災当時定期点検中でノーマークだった4号機の核燃料貯蔵プールが過熱して爆発と、事態はどんどん悪化していく。
その間も菅首相は、動いてはいけないところで動き、動くべきところで動かず受身のまま、「なぜ東電から情報が来ない」と怒鳴り散らすばかりだった。
もはや東電という一民間企業の手に負える事態ではなくなったにもかかわらず、菅首相は15日朝に東電本社に怒鳴り込み、「あなたたちしかいない。東電の撤退などあり得ない。覚悟を決めてほしい」と責任を押しつけた。
菅政権が迷走する間、放射性物質は拡散し住民の屋内退避指示区域は広がるばかりで、ようやく東電に自己解決は無理と理解できたのか、菅首相は17日に原子炉の冷却活動に自衛隊、19日に消防庁と戦力の逐次投入の愚をおかす。
自衛隊の投入についてアメリカからの強い要請があったとも報じられた。
今回の事故では原発の設計上の問題もあったと思うが、原発災害における最高責任者としての菅首相の覚悟の無さ、リーダーシップの欠如、そして指導者としての人格の問題が目に余る。
菅政権は東電から「15条事態」という通報があってから原子力災害対策本部を立ち上げるまでに3時間をロスし、菅首相がベントが必要だと結論づけてから原子力災害特措法に基づき東電にベントを命じるまで8時間をロスしている。
実際にベント作業に着手できたのが11時間後だ。
結果論ではなくて、政府が最初からやるべきことをやってこの結果ならまだ諦めもつくが、そうした意味で今回の原発災害は人災でもあった。
菅政権は日本の信頼性に泥を塗ったと言える。
首相が「俺が責任を取ってやるからあらゆる手段を総動員して放射性物質を封じ込めろ」と叱咤激励すればリーダーと部下との間に強い信頼感が生まれ、東電を始め自衛隊や警察・消防も思う存分働くことができ、被害をもっと少なくできたかもしれない。
アメリカの政府や軍には放射能汚染下でも活動できる専門集団がいるはずだから、事故の初期段階で派遣を要請しておけば、助けになったかもしれない。
ところが菅首相も海江田経産相も自分はいっさい泥をかぶらないようにしておいて部下に責任を押しつけ、まるで督戦隊の司令官のように「引くな。撤退などあり得ない」と怒鳴り散らすばかりでは、部下もついてこまい。
原発の最前線で働いている東電や関連会社の人達、自衛隊や警察・消防は決してモラル(士気)が低いわけではなかった。
むしろ”フクシマ50”のように現場で働いている人達は、自らの身をかえりみずに原発の間近で放射能封じ込め作業に従事するような、責任感の強い勇者ぞろいであった。
報道によれば事故から一週間以上たってもフクシマ50(実際には千人近くいるらしいが)は、床でゴロ寝か椅子に座って睡眠をとり、日に2~3回の乾パンやレトルト食品で活動を続けているという。
もしフクシマ50の双肩に危機に陥っている日本の未来がかかっているのであれば、彼らが実力を存分に発揮できるようゆっくり眠るための装備と十分な質・量の食事など、万全の補給体制を政府が構築してやるべきではないのか!
にもかかわらず菅政権は、まるでフクシマ50に懲罰を与えるかのように冷たく放置しているように見える。
”末端兵士”の高い忠誠心に甘えるばかりで、己の無能さをカバーするために兵士を使い捨てにしようとする、自己保身ばかり考えている指導層。
普段は、やれ人権擁護だの平和を愛するだのと御大層なことを言っておきながら、”地球市民”がつくった民主党は人間の温かい血が通っていない人徳に欠けた人間ぞろいのようだ。
くりかえすが今回の大震災と原発災害では、民主党政権の無能さ、政策の立案・指揮・実行能力の絶望的な欠如が目に余る。
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手術中の患者を放置したまま担当者を変える首相
民主党政権には初めから何も期待していないので、もうこれ以上失望することはないと思っていましたが、神様はどこまでも日本人に試練を与えるのですね…
毎日、ドイツの気象庁サイトで放射線物質拡散予報を見て、各地のモニタリングポスト、ガイガーカウンターの情報を見て、自分の被爆量を計算、積算。そして被爆量と健康被害の関係の知識を色んなサイトを回って集める…日本は本当に民主主義の国なのかと虚しくなります。
さらに政府がガイガーカウンターの販売規制をしているとの噂も広がっている状態。
しかも未だに問題解決の方向性が、政府から示されていないことの絶望感と諦めが国民の中で広がっています。マスコミでは「水棺」「熱交換器」だとかの方法が議論されていますが、具体的なプラン、問題解決までの時間を示されないと国民は何も出来なくなります。それは被災者だけでなく、企業も個人もです。
次に何が起こるのかわからない状態ですから、引越し、住宅・車等の購入、手術、投資、企業の設備投資、復旧etc、なにも手がつけられない状態です。このまま政府が何も方針を示さなければ、福島周辺の経済は窒息死してしまうでしょうね。
実際、首都圏の不動産情報(住宅)を見ていても、毎年物件情報が激しく入れ替わる三月から四月にかけて、ほとんど動きが見られません。
ところが、その管総理、原発担当大臣に丸投げする方針だとか…ある記事では、問題が長期化するにつれ原発に関心を失った…とのことですが、患者が瀕死で苦しんでいる術中に「関心を失って交代」などという人間がリーダーをやっているなんて悪い冗談としか思えません。夢なら早く覚めてほしいです。
JANさん
>その管総理、原発担当大臣に丸投げする方針だとか…ある記事では、問題が長期化するにつれ原発に関心を失った…とのことですが、患者が瀕死で苦しんでいる術中に「関心を失って交代」などという人間がリーダーをやっているなんて悪い冗談としか思えません。夢なら早く覚めてほしいです。
そうなんですか。
上手く遊べないので、友達にそのおもちゃを「もういいや、あげる」という子供もいますが、まさにそれですね。
手術の最中に執刀医を変えるのは本来得策ではないのかもしれませんが、民主党が一刻も早く下野することが日本にとって最良の復興策なのかもしれません。
問題山積
4月10日は私の誕生日でしたが陸前高田に本籍を置きっぱなしの私は一時的にでは有りますが、目出度く無戸籍の反政権不逞日本人とは相為りました。www
閑話休題
現在の奸政権の問題は中央防災会議を開かない、憲法29条を発動しない等々多すぎてお話に為りませんが、建築業から見た問題点を二つ。
私の同級生も東北で合板メーカーを経営していますが彼らは必死で昼夜兼行で生産庫だししています、しかし関西の一部問屋やメーカーでは出庫制限をしています、所謂売り惜しみですが、本来は条例や法令で強制蔵出しができるのですが民主党はやりません。
一例として3万枚の在庫が一枚100円づつ値上がりしている現状です、悪徳業者は一日で300万円の儲けです、これに対して民主党案は最大で100万円の罰金と社名の公表、これすらも実施してません。
次に震災で壊れた屋根の補修に絶対必要な南蛮漆喰が有りません。
この原料は輸入品ですが、船会社が日本沖で入港を躊躇しています。
原因は放射能汚染。
貨物船は荷物を降ろすときっ水線が上がりバランスが崩れ不安定に為ります、転覆しやすく為るのです。
そこで船はバラストタンクに現地の水を注水し母港に帰って荷物を積んだらその水を吐き出す訳です。
もしも日本の海水が放射能で汚染されていたら?そんな水を母港に持ち帰るのはまっぴらだと言う考えなんですね船長さんと船会社は・・・
民主党政権は判り易い港湾安全情報を公開していません。
なので船会社や船長さんの情報力と判断力で入港しなかったり渋る船が大量に出ての物不足が有るんです。
我が国は民主党政権に緩慢な海上封鎖を仕掛けられているのです。
既に東京と大阪では建築業者の黒字倒産が始まっています、復興需要など夢のまた夢です。
火天大有さん
火天大有さんは陸前高田の方でしたか。 ニュース映像で見ましたがひどいことになってしまって...
なんと声をおかけして良いか言葉も見つかりませんが、お見舞い申し上げます。
>私の同級生も東北で合板メーカーを経営していますが彼らは必死で昼夜兼行で生産庫だししています、しかし関西の一部問屋やメーカーでは出庫制限をしています、所謂売り惜しみですが、本来は条例や法令で強制蔵出しができるのですが民主党はやりません。
やはり売り惜しみが出てしまいましたか。残念なことです。
まずは国民一人一人の自発的な協力が求められますが、こういう時こそ政府の出番でしょう。
港湾安全情報の件も広い意味での風評被害でしょうが、民主党政権は世界を意識した情報発信が全然できていません。