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第8回 世界はパクス・シニカとどうつきあうべきか?(その2)
- 2005/08/31(水) 21:07:37
前回は、日本が世界戦略を策定する上で、絶対にはずすことのできない、ベースとなるべき価値観は、民主主義と自由貿易であるという事について確認した。
それでは、これらのことをふまえながら、日本と、日本が属する自由世界は、中国と上海協力機構とどのようにつきあっていったらよいか、具体的に考えてみよう。
中国を盟主とする上海協力機構は、パキスタンやイランといった国々を準加盟国として取りこみながら、拡大の様相をみせている。 しかし、一見順調に見える上海協力機構体制だが、矛盾や対立の火種をかかえているのも事実だ。
そもそも上海協力機構は、中国とロシア、それに中央アジアの世俗主義イスラム国家が、イスラム原理主義過激派に対処するために結成した同盟機構だ。
それならば、「イスラム原理主義革命の輸出」をスローガンにしてきたイランも上海協力機構の潜在的な敵となるはずだが、イランの上海協力機構準加盟は認められた。
中国やロシアは、自国製兵器の市場として、また石油などエネルギーの供給源としてイランに接近し、イランもアメリカに対抗するための兵器の調達先として中国とロシアを頼りにしており、こうした利害の一致が宗教的な対立さえ乗り越えさせている。
だが、中国やロシアが自国領内でウイグル人やチェチェン人といったイスラム系少数民族を弾圧しつづける限り、イランやイスラム原理主義過激派国際組織と中国・ロシアの対立の火種はくすぶりつづけるだろう。
またロシアと中国でさえ、完全な一枚岩とは言えない。
中国と陸続きで国境を接するロシアは、中国に完全に心を許したわけではなく、人口の希薄な極東シベリアに確実に浸透する中国の経済力や中国系市民への警戒感を依然持っており、上海協力機構の盟主・中国へエネルギーや武器をただただ貢ぐような、現在の状況にいつまでも甘んじるつもりもないだろう。
ロシア産の石油や天然ガスをすべて中国に吸い取られてしまうよりは、金払いのいいアメリカや日本に売ったほうが、ビジネスとしてもうまみは大きいし、
ロシア製の最新兵器を果てしなく中国に売りつづければ、ロシアと中国の軍事力は逆転し、プーチン大統領のかかげる”強いロシアの復活”どころか、ロシアの中国の従属国的な地位が固定され、ロシアの対中外交の自由度が、著しく制限される可能性があるからである。
このように、上海協力機構のゆくすえは不透明である。
もしかしたら中国と他の国との間の亀裂が表面化して、上海協力機構は崩壊するかもしれないし、北朝鮮や韓国あたりを新規加盟国として加えて、逆に拡大するかもしれない。
ただ、前回の冷戦で、自由主義世界の競争相手となった、ソビエトを盟主とするワルシャワ条約機構と、中国を盟主とする上海協力機構の置かれた状況はかなり違う。
その中でも最大の違いは、ワルシャワ条約機構諸国は、盟主であるソビエトから産する、豊富な天然資源・農産物によって発展した工業・農業に基づく社会主義計画経済によって、軍事力・経済力などの総合国力を支え、資本主義の西側自由主義諸国にさほど依存せずに、冷戦を戦えたのに対して、
上海協力機構は、盟主である中国自身が資本主義経済にどっぷりとつかり、資本・技術・産業製品の輸出市場などにおいて、日・米・欧の自由主義世界に決定的に依存しているということである。
以上のことから、自由世界と上海協力機構の間で、もし次の冷戦が起こったとしても、勝敗は明らかだと思う。(自由世界がよほどバカなマネをしなければの話だが)
そして50年や100年の長いスパンで考えれば、一旦民主化されたのに独裁制に逆行するといった”ゆり戻し”があるかもしれないが、いずれ中国やロシアといった国々も、真の意味で民主化の方向へと進むことは避けられないだろう。
日本としても、このことはよく頭の中に入れておかなければならない。
それでは、中国を盟主とする独裁国家の集団・上海協力機構に対して、日本、そしてアメリカ・EUを含めた、自由主義世界はどのように付き合ったらよいであろうか。 それについては、やはり中国や上海協力機構諸国がどういった内政・外交政策を取るかによって、大きく左右される。
もし、中国が日・米・EUの自由世界と協調し、日本やASEAN、インドも含めた周辺国に対して、覇権主義的な領土拡張政策を放棄するならば、日・米・欧は、中国に対する関与政策を維持しなければならない。
つまり中国に対して投資を持続し、中国製工業製品の輸出市場を提供して、中国経済の発展に協力しつつ、中国を自らの責任を果たす、国際社会の一員として参加させなければならない。
それによって中国の中産階級を育成し、彼らを中国の民主化を担う次の世代とすることが、長期的な国際社会の利益となるだろう。
しかし、中国が天安門事件のように、国内の民主化要求の声を武力で圧殺し、高まった経済力を軍事力へと転換させ、共産党独裁体制を維持しながら、あらたな領土・領海や天然資源の獲得のために、自由世界や中国の周辺国に対して、”中華民族優越主義”と強大な軍事力を背景とする脅迫を繰り返し、実際に暴力を行使するとなると話は別である。
日・米・欧を中心とする自由世界は、まず、中国への投資を抑制して、中国の強大な軍事力を支える経済力の源泉となっている、資金や高度な技術などの流れを抑制し、中国の国力を限定しなければならない。
そして日本・アメリカ・EUの自由主義三極と、ASEAN諸国やインドなどが安全保障の分野で密接に協力しながら、中国と上海協力機構が、危険な軍事的冒険を挑むような過ちをおかすのを抑制しなければならない。
こうした安保・経済両面からの抑制政策をとることによって、中国と上海協力機構が国際法を守り、国際社会において責任ある行動をとるよう、自由世界が彼らに圧力をかけ続けることが、世界の平和と安定のために絶対必要である。
ただ、この抑制政策を成功させる上で、日・米・EUの自由主義三極の一致団結が欠かせない。 自由主義諸国同士で対立したり、中国でのビジネスに目がくらんで、誰かが”ぬけがけ”するような事はもってのほかである。(逆に相手側は、自由世界の分断を狙ってくるだろう)
日本としてできることは、アメリカの行き過ぎた一極行動主義に自制を促して説得するとともに、EUで指導的立場にいるフランスやドイツに「アメリカ憎し」のあまり独裁国家・中国に接近し、EU製の高性能兵器を売却してアメリカを牽制させるような、いきすぎたマキャベリズムを、やめさせなければならない。
また、アメリカなどと協力して、ASEAN諸国が中国の衛星国家群として従わせられるような事が起こらないよう配慮するとともに、”世界最大の民主国家”であり、親日国家でもあるインドが、中国やロシアなど上海協力機構側をパートナーに選ぶような過ちをおかさないように説得する必要もあるだろう。
以上みてきたように、中国と上海協力機構が、国際社会と協調するのであれば、日本を含む自由世界は関与政策を維持し、彼らが軍事力を背景とした危険な冒険主義をとるのであれば、自由世界が結束して抑制政策を取って、彼らの国力を限定させるといったように、相手の出方によって柔軟に政策を使い分けることが肝要である。
これこそ、中国と上海協力機構が、自由主義世界や他の諸国と共存共栄のために協調し、世界の安定と持続的な発展のために責任のある行動を取らせることに寄与するのではないだろうか。
そ~らきた
- 2005/08/28(日) 00:58:11
韓国政府は、日韓国交正常化交渉に関する外交文書のうち、機密扱いをとかれていなかった、残りの文書全てを公開した。
その結果、これまでの日本側の主張が正しく、韓国側の主張がなんら根拠の無いものであることがはっきりとし、あらためて日韓間の戦後処理が完全かつ最終的に解決されていたことが証明された。
機密文書を自分で公開することによって、みずからの間違いを証明して”自爆”してしまった形の韓国政府だが、当時の交渉において、いわゆる”従軍慰安婦”の補償問題は入っていなかったとして、あらためて日本側に賠償を求めることを発表した。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050826-00000088-kyodo-int
まったく、韓国という国は相手にするだけでもアホらしく、日本外務省の貴重なマンパワーをさく価値さえ無い国だが、彼らの妄言を見過ごすわけにはいかない。
日韓交渉において、日本から受けた被害を証明すべき韓国側は、確たる証拠をあげられなかったために、この被害を受けたからいくら、あの被害についてはいくらというような、”個別積み上げ方式”ではなく、日本が韓国統治をした結果生じた被害全体についていくらという、”一括精算方式”で請求する形となった。
一括精算だから、韓国側が請求権に基づく補償金という解釈で日本から受け取った5億ドルには、韓国という国家に対する補償と、個人補償の両方が含まれているのである。
もちろん、いわゆる”従軍慰安婦”が補償の対象となるのであれば、すでに5億ドルの中に含まれており、韓国政府が”従軍慰安婦”個人に補償しなければならないという事である。
韓国政府がカネを一括して受け取り、被害者個人に支払う義務があることと、それを当時の韓国政府も明記していたことは、親切にも韓国政府が情報公開した、韓国外交部と経済企画院の内部文書から明らかになっている。
である以上、韓国政府の言う「当時の交渉には”従軍慰安婦”の問題は含まれていなかった」というのは大ウソで、1965年に”一括精算方式”で過去が清算されることによって「日本にもう金銭を要求しない」と明記された日韓基本条約にサインした以上、韓国が日本にカネを要求できる根拠は、みじんも無いのである。
仮に韓国が、個別積み上げ方式で請求できたとしても、莫大な日本資産を朝鮮半島全体に置いてきた以上、双方に請求権を行使すれば、カネを払わなければならないのは韓国のほうである。
二重、三重の根拠から、日本の過去の清算は完全かつ最終的に終わっているのである。
日韓国交正常化交渉の裏側(その1)
日韓国交正常化交渉の裏側(その2)
日韓国交正常化交渉の裏側(その3)
日本政府はこの問題について「日韓基本条約締結で解決済み」と発表したが、当然の対応だ。
ところで、ある日本の識者が「ノ大統領の支持率低下が著しくなってきたので、そろそろ日本叩きが始まるだろう」と予測したそうだが、ズバリ的中である。
前回のノ大統領による日本叩きの時、筆者は「ノ大統領の”日本叩き逃げ”を許すな」というコラムを書いた。
しかし、日本政府・外務省はそれを笑って済ませ、あまつさえ1銭だって出す必要の無い、サハリン在住韓国人へのさらなる支援を発表した。
今回、韓国政府は”従軍慰安婦”の他に、サハリン在住韓国人への支援金支払いも要求し始めたのは、それが原因だろう。
これまでに何度も指摘したことだが、戦後の日中・日韓関係は、不毛なループの繰り返しである。
まず中国や韓国が、靖国やら従軍慰安婦問題やらで、日本に対してインネンをつける。
↓
日本側の外交を知らない政治家・官僚が「この問題で日本は悪くないけども、日本側が”大人の態度”で”誠意”をみせれば、中・韓も納得して事態を穏便に解決できるだろう。それで問題は終わりになるだろう。」と考えて、やる必要も無い譲歩をする。
たとえば、終戦の日・8月15日で決定していた、首相の靖国神社参拝日を変更してみたり、とりあえず”おわび”談話を内外に発表したりする。
↓
中国や韓国は「日本が譲歩して弱みを見せたぞ。あともう一押しすれば、日本を完全に自分達の思い通りにさせられる」と考えて、
中国が「日本の首相の靖国参拝を永久にやめろ」と言えば、韓国は「おわびの言葉だけでは不十分だ。行動で”誠意”を見せろ(つまりカネをよこせということ)」と主張して、日本側の意図に反して日中・日韓関係は泥沼化する。
↓
問題の収拾がつかなくなった日本政府は「なんとか中・韓をなだめて、靖国問題や慰安婦問題を終わらせなければ」とあせって、新たな譲歩のネタを探すようになる。
そして中国軍が武装解除した日本軍からひきとった毒ガス兵器の処理や、戦前に高賃金が魅力でサハリンに移住した韓国系日本人への支援策など巨額の援助を打ち出す。
↓
これをみた中・韓は「日本がまた譲歩したぞ。日本が自分達の言いなりになるのはもうすぐだ」と、反日運動をますます強化する。
「日韓基本条約は無効も同然だ。賠償請求交渉をやりなおせ」と問題解決のハードルをどんどん高くするし、新たな日本攻撃のネタを持ち出してくる。結果として日中・日韓関係はますます泥沼化する。
そして振り出しに戻るのである。
衆議院選挙後の新政権には、この泥沼ループから日本を救い出す義務がある。
日韓関係に限って言えば、韓国側が日韓基本条約を無視するのであれば、相互主義にもとづいて、日本側も基本条約で放棄した、半島においてきた日本資産の返還を請求するべきである。
また国有資産だけではなく、朝鮮半島からの引き揚げ者が泣く泣く手放した、現金・預金や有価証券などの返還も求めなければならない。「目には目を、歯には歯を」である。
ともかく、韓国(中国)とつきあう上で絶対にやってはいけないのが、下手な”仏心”を持つ事である。
例えるなら、韓国から結婚を申し込まれて、OKするつもりも無いのに、「いきなり”ごめんなさい”するのは、カワイソウ。デートに1回ぐらい付き合ってこちらの誠意をみせてあげて、その後やんわりと断ろう」なんて下手な”仏心”をみせるから失敗するのである。
1回でもデートすれば、韓国は恐ろしいストーカーに変身し、後でどんなに「結婚お断り」のメールを送っても、職場に、いきつけのレストランに、そして自宅の玄関にとつきまとってくる。
韓国とうまく付き合う秘訣は、NOと言うべき時は、心を鬼にしてキッパリと始めからNOと言い、それを貫く事である。
そしてストーカーと化して、「法律(条約)なんか知ったことか」といった行動をみせる韓国に対して、彼らの自制心や良心に期待するなどムダで、「目には目を、歯に歯を」という実力行使をする事が重要である。
”にんにく戦争”を読んでいただければ、おわかりのように、韓国は弱者にはどこまでも強いが、強者には卑屈なほど弱いからである。
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・トラに猫のエサをやって満足させようとしてもムダである。
・宥和政策を支持する人間とは、自分を食べるのは最後にしてくれるものと期待しつつ、ワニを育てる人間である。
どちらも、ウインストン・チャーチル
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笑わせる、韓国の新対日ドクトリン
日本がとるべき対韓外交を今一度考える。
今こそ日韓関係打開の好機である。
韓国と、どうつきあっていくべきか?(その3)
韓国と、どうつきあっていくべきか?(その4)
韓国と、どうつきあっていくべきか?(その5)
アジアからの声
- 2005/08/25(木) 23:05:29
中国や韓国が、日本の国際的な地位向上へのしっと、あるいは、日本が自らの国力を十二分に発揮するチャンスを永久に奪い、相対的に自国の対日外交を有利にして日本を意のままに操るために、
または、自国政府の失政を原因とする国民の不満や怒りを、イケニエとしての日本へと向かわせて、支持率を向上させるために、
日本の歴史教育や戦没者追悼といった事をネタにして、反日デモや暴動をあおり、
絶対にまちがいをおかさない”正義の味方の中・韓”が、アジアを代表して”悪の権化たる日本”を懲らしめるかのような、言動を繰り返してきたのは、よく御存知だろう。
このような中国・韓国のやり方に対して、アジアの目が少しづつ変わってきたようだ。
インドのヒンダスタン・タイムズ紙4月28日づけに、「中国の指導者が日本から受けた苦しみについて、主張するのはもっともかもしれないが、他のアジアの人々について語るべき立場にはない」という主張が掲載されたことについては、以前ご紹介した。
この記事は、中国が常々「アジア全体を代表して、過去を反省しない悪い日本をこらしめてやる」と言ってきたことに対して、「中国よ、お前は決してアジア全体の代表では無い」とのインドからの叫びであった。
このようなインドの新聞の呼びかけは、まったくの正論であるが、実はもっと踏み込んだ主張をしていた新聞があった。 ちょっと長いが引用する。
「ほかのアジア諸国同様、フィリピンも日本軍により多くの国民を失った。我々はその事実を忘れることは無い。
しかし、かかる”歴史的犯罪”をもって、旧敵国(注:日本のこと)との友好関係を育て、維持していく障害としたことはない。 その理由は明らかだ。
日本は敗戦後、国策としての戦争から背を向け、アジアと世界のよき力となることを国の目標としたからである。(略)
中国は特に、弱小国を中心とする他の諸国が、日本を非道徳的な国であると見ることを望んでいる。
しかし、むしろ、ほとんどのアジアの国は中国が攻撃的であることの方に不安を抱いている。 中国は日本から学ぶべきだ。
(マニラ・タイムズ4月21日づけ社説)
民主党の岡田代表をはじめ、みずからの中国とのビジネスが大切でしょうがない一部の財界人などは、日本と中国や韓国との関係が悪化するたびに、パブロフの犬的反射で、「悪い日本が反省し、全アジアの代表である中国や韓国の言うとおりにしなければ」といった反応をしがちだ。
しかし実際は、アジアの声は決して一つではなく、中・韓の主張に真っ向から反対するものもある。
この点をふまえれば、民主党は”アジア重視政策”をうたっているが、彼らの言うアジアとはせいぜい中・韓だけで、実際のところ”中・韓だけ重視政策”というだけにすぎない。
しかも、中・韓政府の対日批判や、反日デモや暴動を起こす背景となった、中・韓国民の世論・感情というものが、決して正しいわけではないということを、マニラタイムズ紙は見切っているのである。
真実を見ぬく眼をもった人々が、日本よりむしろ中・韓を除く、その他のアジア諸国で声を上げはじめているというのは、非常に興味深い現象だ。
このような事実をふまえれば、中国や韓国を”アジア全体を代表する正義の味方”のように考えて、「日本の政策を彼らの望みどおりにしなければ、アジアから孤立する!世界から孤立する!」などと心配することが、いかに愚かなことであるかが、わかる。
日本は、真実や正義、公平さを愛する世界の人々とだけ、共に歩めば、それで充分ではないだろうか。
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日本外交がこれまでしてきたこと
日本は外国と、どうつきあったらよいのか?(その1)
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”強い中国”と、そのアキレス腱
- 2005/08/22(月) 23:22:14
上海協力機構のリーダー中国と、NO.2のロシアが、現在中国の山東省で、大規模な軍事演習を実施中である。
両国は、この軍事演習が特定の第三国に対するものではないことを公式に表明しているが、そのような外交辞令を真に受ける者はいない。
http://headlines.yahoo.co.jp/
hl?a=20050820-00000312-yom-int
今回の軍事演習の目玉となっている、陸海軍一体となった強襲揚陸演習や、戦略爆撃機とミサイルを使用した洋上打撃演習などをみれば、この軍事演習の仮想敵が、台湾と日米安保体制であるのは間違い無い。
強襲揚陸演習は台湾上陸作戦を想定したものであり、洋上打撃演習は、アメリカ空母機動部隊による、中・台軍事衝突時の米軍介入を阻止するためのものであることは、明らかである。
ロシアは、自国のエネルギー資源の潜在的な顧客として日・米に期待しているので、なるべく両国を刺激しないよう、軍事演習の舞台を台湾や沖縄の対岸である浙江省ではなく、山東省にするよう中国に要請したもようだ。
ともかく中国としては、この軍事演習を実行することによって、「戦争も辞さない、強い中国」の軍事力を誇示し、「台湾問題への口出しは許さない」と、日米に対して無言の圧力・警告を与えることを選択した。
これら中国と上海協力機構の動きを牽制するように、アメリカのライス国務長官は、中国の軍備拡張に対して明確に懸念を表明している。
http://headlines.yahoo.co.jp/
hl?a=20050821-00000011-san-int
最近、アメリカは中国へ先端兵器を売却している主要国のひとつ、イスラエルに圧力をかけはじめた。
イスラエルは過去に、中国の新型戦闘機”殲撃10型”の機体製造ノウハウや火器管制レーダー、”パイソン”空対空ミサイル、無人偵察機などを輸出したと言われている。
中国空軍が開発と配備をすすめている、空中早期警戒管制機(AWACS)のレーダーやコンピューターにも、イスラエルの軍事テクノロジーが使用されているという情報もあるが、アメリカは、イスラエル経由の西側軍事技術流出を防止して、中国の軍備拡張にブレーキをかけようとしている。
http://headlines.yahoo.co.jp/
hl?a=20050818-00000069-mai-int
アメリカはまた、上海協力機構へ接近のきざしをみせていたインドに対し、原子力発電所建設などの技術援助を与え、インドの取りこみをはかろうとしている。
http://headlines.yahoo.co.jp/
hl?a=20050721-00000010-san-int
経済の急激な発展にエネルギー供給が追いつかないインドは、中央アジア諸国やロシア、イランなどに石油・天然ガス利権を持つ中国に接近して、経済成長に必要なエネルギーを確保しようとしたようだが、アメリカがそれに「待った」をかけたわけである。
アメリカ・中国双方にとって(もちろん日本にとっても)インドが重要な理由は、中国が中東で買いつけた石油の輸送路・シーレーンがインド洋を通っているからである。
これはあまり知られていない事実だが、現在中国には石油や天然ガスといったエネルギー資源の国家備蓄が一切無い。(日本は6億バレル以上、約半年分の備蓄がある)
中国では現在、ガソリン不足が深刻な問題になりつつあるが、もし中国へのエネルギー供給が全面的にストップするような事がおこれば、大変なことになる。
石油ショックによる中国経済の悪化も問題だが、エネルギー不足によって、中国軍の艦艇や戦闘機が自由に動けなくなる可能性があり、だからといって民需用の石油を軍用へ優先的に回せば、中国経済は決定的なダメージを受ける。
中国政府、特に人民解放軍幹部が、このような可能性を心配しているようである。
中国が台湾問題にからんで日米にみせる「中国は戦争も辞さない」といったコワモテの仮面の裏側に、このような心配と弱点が隠されているのである。
中国が世界中に”シノペック”のような国策石油会社を進出させて、石油や天然ガス利権を囲い込んで、国際石油市場をとおさずに本国へ直送したり、日本や東南アジア諸国とあえて摩擦を抱えても、東・南シナ海での、海底資源囲い込みに狂奔しているのは、こういった理由からだ。
中国は、エネルギーの安定的な供給確保の観点から、なるべくなら中国とその同盟国内を通る陸上パイプラインが、供給ルートとして望ましいと考えているようである。
中国は、中央アジア諸国やロシアから中国へと向かう石油パイプライン建設を積極的にすすめているし、ミャンマーと中国とを結ぶ石油パイプライン建設構想も浮上している。
http://headlines.yahoo.co.jp/
hl?a=20050817-00000001-scn-int
これは、ミャンマー産の石油のほかに、中東で買いつけた石油をミャンマーで陸揚げし、陸上パイプラインを使用して中国へと送り込もうとするもので、これが完成すれば、現在中国の輸入原油の8割が通るマラッカ海峡を避けて、より安全にエネルギーを本国へと供給できる。
(中国がマラッカ海峡を避けたい理由は、海賊の危険性もあるが、シンガポールを押さえている米軍の存在が一番であろう。もちろんロンボク海峡をぬけるルートもあるが、アメリカの戦略拠点グアムに航路が近くなって、うまくない)
しかし、中国が買いつけた中東原油をミャンマーへ持ってくるには、どうしてもインド洋を通らなければならない。 そのために「インド洋の制海権を誰が握るのか」といったことが、中国にとって重要になってくるわけである。
現在、インド洋の制海権を握っているのは、まず第一に、インド洋に浮かぶ英領の孤島、ディエゴ・ガルシアをおさえるアメリカだろう。
ディエゴ・ガルシアを拠点にステルス爆撃機や空母機動部隊を展開させれば、中国のシーレーンの命運を容易に左右できる。
二番目が、空母も保有するインド洋沿岸では最大の海軍力をほこるインドで、中国はベンガル湾に近いミャンマー領のココ諸島に軍事基地を持っているが、インド洋におけるプレゼンスは薄い。
(日本が、アメリカ軍などのアフガン対テロ作戦を支援するため、イージス護衛艦や補給艦をインド洋に派遣したところ、中国だけがヒステリックに海上自衛隊のインド洋展開を批判をしたのも、これでうなずけよう)
中国が近年、イージス艦や攻撃型原潜の建造を急ぎ、空母保有も視野に入れた”ブルーウォータ―・ネイビー”(外洋型海軍)建設を進めているのも、台湾併合とともに、中国自身のシーレーン防衛のためであるのは明白である。
インド洋は日本のシーレーンでもあり、中東から日本へ石油を安定供給させるには、他国に日本のシーレーンを守ってもらうか(現状はこれ。日本のシーレーンを守ってくれているのは、もちろんアメリカである)、日本が自力で守るかしかない。
その意味でも、日本はこの地域に無関心ではいられない。
中国は、軍人による過激な発言とともに、日米同盟や台湾を仮想敵とした軍事演習を活発化させている。
さらに、東シナ海では、日本の抗議などお構いなしに、海底資源の採掘を急いでおり、日本側の資源探査などの活動に対しては、中国水上警察の艦艇を派遣して、武力をちらつかせながら露骨な嫌がらせを繰り返している。
最近日本国内で、にわかに「日本は親米であるべきか、親アジアであるべきか」といった問いが提起されている。
(この場合のアジアとは多くの場合、パブロフの犬的反射から、中国・韓国・北朝鮮をさしているようだ)
しかし、一時の感情に基づいた選択によって、日本の将来を誤らないようにしなければならないが、民主国家・日本の将来の選択の基準はもちろん、親米か親アジアかではなく、親民主主義でなければならない。
そうなると自ずから答えは導き出される。
日本はいつまでも「安保アレルギーで受けつけないから」などとは言っていられない。
東アジアにおける独裁国家・中国の増大する軍事力を背景とした、危険な膨張主義に対する歯止めとするためにも、日本は、アメリカとインドとの関係強化をうながしつつ、インドとの安全保障分野における協力関係を強化させるべきである。
(マラッカ海峡をかかえるASEANと日本、ASEANとアメリカの安保協力強化も同様に重要であるし、もちろんインドへのエネルギーの安定供給や投資といった経済面の協力も必要である)
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韓国TVの反日プロパガンダ番組デッチ上げが発覚
- 2005/08/19(金) 23:53:31
韓国のテレビが「八・一五」に特ダネとして報道した“旧日本軍による生体実験”と称する映像が、実は中国で制作された反日・劇映画の場面だったことがわかり、大誤報として問題になっている。
http://headlines.yahoo.co.jp/
hl?a=20050818-00000003-san-int
もともとは戦後の中国で制作されたカラー映画を、わざわざ白黒フィルム風に加工して放送している(当時はカラー映像が無かったから)ところから、
この番組は当初から、韓国国民を洗脳するプロパガンダ番組として制作されたことがうかがえる。
新聞・テレビ・ネットを問わず、韓国のマスコミは「古代の朝鮮半島の先進的な王朝が、原始的な倭国(日本)に文明を教えてやった」からはじまって、「戦後、日本は朝鮮半島侵略と略奪を全然反省せず、賠償もしていない。」まで、韓国政府の主張・歴史観に沿ったかたちで、種々のプロパガンダを韓国国民に流しつづけ、
韓国政府が決定した唯一の歴史観に基づいて編纂される国定教科書、”国史”を国民に強制する、洗脳的な歴史教育と二人三脚で、韓国の歪んだ世論の形成に大きな役割を果たしてきた。
義務教育制度とマスコミを利用しながら、国民世論のコントロールを目指すという、国家によるおぞましい情報工作が、1980年代に軍国主義政権が倒れて、民主化されて以降も、韓国に存在しつづけていることに驚愕せざるを得ない。
(韓国政府の対国民情報工作のアクティブ戦術が洗脳教育なら、パッシブ戦術は今、官民をまきこんで大騒ぎになっている、安企部による大規模盗聴事件である)
また、民主化されてもなお韓国国民が引きずりつづけている民度の低さが、韓国政府によるプロパガンダを依然、有効な手段にさせている一因である。
http://headlines.yahoo.co.jp/
hl?a=20050708-00000010-scn-int
クロフネは、一国の国民の成熟度を測るものとして「新聞・TV・ネットなど、メディアが発信する情報を、その国民がどの程度、無批判に信じ込んでしまうか、鵜呑みにしてしまうか」を、一つのモノサシとしているが、
この記事によれば、なんと70%の韓国人がネットの情報を信用できるとしており、(日本13% 中国48%)
韓国の国民の大半は、自国メディアが発信する情報の正誤や信憑性を、自分の頭で考えて判定する能力が無く、いかに韓国の国民が、メディアによる扇動・洗脳に脆弱であるかを示している。
また中国で実施された、ある世論調査では、約95%が「日本の軍国主義が復活する可能性が高い」と回答しており、異常というよりほか無い。
中国政府が、自らの失政から生じた国民の不満の矛先を、中国共産党ではなく日本へと向かわせるために、アジアで最も進んだ民主主義国家という日本の実像が中国国民の目に触れないようシャットアウトし、日本がすぐにでも軍国主義国家になるかのような虚像を、国民に必死になって植え付けている様がうかがえる。
http://www.sanspo.com/sokuho/
0815sokuho074.html
中国や北朝鮮といった全体主義国家、そして80年代に軍国主義を卒業し、民主化されたはずの韓国も含めて、これらの国の世論工作の基本は”愚民化政策”であり、真実でも政府にとって都合の悪い情報は一切シャットアウトしつつ、義務教育制度やマスコミを利用して、政府の意に沿った国民世論を形成していくのである。
これらの国の政府が「太陽は西から昇らなければならない」と決断すれば、
外からの情報を遮断し、義務教育やマスコミを総動員して国民に「太陽は西から昇る」と繰り返しすりこみ、国民もそれをパクっと丸呑みしてしまうために、いとも簡単に「太陽は西から昇る」という国民世論が形成されていくのだ。
このように形成された、中国や韓国の”国民世論”に配慮し、ひきずられる形で、日本の将来を左右する政策を決定する事ほど、愚かなことは無いだろう。
(愚民化された中・韓国民の言うことに、「ごもっとも」といって従うのだから)
「中国や韓国など、周辺諸国の国民世論や国民感情に配慮して、内政・外交政策を決定せよ」といった事を言う、政治家や外交官、国民は日本に少なくない。
そして過去には、周辺諸国の国民世論・感情に配慮すると称して、実際に日本の政策が引きずられてきた。
今年の中・韓の反日デモが最も激しかった時期に、宮沢喜一氏も「韓国は民主主義国家なのだから、(日韓関係においては)日本がこれからも我慢しなければならない」といった内容の一文を、産経新聞に寄せていたが、
彼らは「中国や韓国の国民だって、日本国民並みに正確な情報へ自由にアクセスでき、メディアの発信する情報の正誤や信頼性の高低を見極めることが出来るぐらいに成熟しているのだ」という幻想を抱いているから、そういった結論に達するのだろう。
しかし、日本と中国や北朝鮮、韓国との、民主主義の発達度、国民の成熟度の違いを無視して、周辺国の”世論”とやらに迎合し、日本の内政・外交政策を決定すれば、日本の将来に取り返しのつかないダメージを与えることになる。
「太陽は西から昇る」と主張する、中国や韓国の世論が怒っているから、とりあえず彼らに配慮しておこうという理由で、日本の子供達に「太陽は西から昇る」と教えれば、どんなことになるか、マトモな人間ならすぐにわかることである。
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靖国神社で第二次大戦の和解式典を!
- 2005/08/17(水) 01:00:19
戦後60年の節目の年の8月15日が過ぎた。
今年の8月15日に靖国神社に参拝した人は、過去最高の20万5千人にも達したという。
http://headlines.yahoo.co.jp/
hl?a=20050816-00000001-san-soci
そこで、ふと思ったことがある。
そっと静かに眠らせて欲しいと願う英霊の皆さんからお叱りを受けるかもしれないが、靖国神社で、日本やドイツといった旧枢軸国側とアメリカ・イギリス・オランダ・中国といった旧連合国側の現職首脳、元兵士らが一堂に会して、戦後の和解を記念するための式典が、開けないだろうかということである。
靖国神社は、海外ではとかく歪んだイメージで報道され、世界中の多くの人に誤解を与えているように思う。
日本人であるか外国人であるかを問わず、靖国神社を批判する人は、”新しい歴史教科書”を批判する人がたいていそうであるように、実物を1回も見たことが無いのにもかかわらず、はじめから批判ありきで、感情的な決めつけ(それを差別という)による批判のための批判をしがちである。
しかし、現地に行ったことがある人なら、普通の神社とさほど変わりがないと感じるはずである。
それは至極当然で、日本固有の宗教である神道は、軍国主義を崇拝する儀式もなければ、侵略を奨励する教典を持つわけでもないからである。
日本の神道における八百万の神々は、太陽や山、川、滝といった自然も神なら、亡くなった人や動物も神である。
多神教である神道の神々は、キリスト教やイスラム教の唯一神とは全く違い、全知全能・絶対的善の存在でもない。
神道の神々には天津神・国津神があり、遠い昔(おそらく3~4世紀ごろの話だろうが)天皇家が日本を統一する過程でとりこまれた、統一される側の人々が崇めていた神々が国津神、それに対して天皇家やその家臣たちが崇めていた神々が天津神となったらしい。
つまり、神道は統一される側の人々の神々を、邪神として一柱残らず消去してしまい、天津神による一神教を目指すのではなく、国津神の存在を認めて取りこんでいったのである。
もちろん国津神の神々には消去されてしまったものや、その由来が改変されてしまったものもいたらしい。 しかし、すべての国津神信仰が禁止されたわけではない。
神道には邪神だから必ず抹殺すべしという思想は存在せず、よって国津神は邪神であり、それらを祭る神社はけしからんから参拝するなとか、完全に取り潰すべきだといった考え方は出てこない。
(「靖国神社に祭られている、神になったいわゆるA級戦犯は邪神だから、崇拝することは絶対許されない」とかたくなに信じる中国や韓国の人々には、理解できないようだが)
このように神道は寛大な宗教であり、複数の神の共存を許すし、この神は善か悪かといった善悪二元論からも超越しているのである。
(初詣客数・日本一の明治神宮にお正月行く人たちは、いちいち「明治天皇は正しい人か悪い人か?」と考えて参拝しているだろうか?)
神道の専門家ではないので、こみいった神道論はボロが出ないうちにやめておく(もう出てるって?)が、ともかく靖国神社そのものを外国に公開して、なんらやましいところは無い。
ならば前述のように、靖国神社で、日本と旧連合国の現職首脳、元兵士らが一堂に会して、戦後の和解を記念するための式典を開き、それを海外のメディアに世界中に中継してもらったらどうだろうか。
その狙いは、靖国神社のありのままの姿を見てもらって、比較的おおらかな神道という日本固有の宗教への誤解と偏見をとき、世界中の人々によく理解してもらうということがまず一点、(それには遊就館の展示も工夫が必要)
そして太平洋に浮かぶ小島ひとつを奪いあって、双方が万単位の犠牲者を出すような、悲惨な戦争を行った日本とアメリカをはじめとして、旧枢軸国側と旧連合国側が、60年前の恨みを今日思い出して、怒りと憎しみの火に油を注ぐのではなく、
恩讐を乗り越えての和解と寛容の大切さを世界にアピールすることは、紛争やテロの絶えない現代世界の全ての人々にとって、重要ではないかと考えるのが二点目である。
各国の元首の中には、靖国神社に足を踏み入れるのは政治的リスクがあり、避けたいと考えるものもいるだろう。
しかし、あきらめずに水面下で調整を行えば、アメリカや欧州勢のいくつかの国からは参加が見こめるのではないかと思う。
イギリスの首相だったチャーチルは「戦争が終わった瞬間に、ドイツ人への憎しみは消えた」といい、独仏の和解とヨーロッパ合衆国の建設を提唱した。
欧米諸国ならば式典参加への理解を得ることが比較的たやすいのではないだろうか。
(以前、ブッシュ米大統領も靖国参拝を希望したことがあったそうだが、外務省が断ったという。世界に日米の和解と友愛をアピールする、千載一遇のチャンスをみすみすフイにするとは、外務省は愚かなことをしたものである)
本来なら戦後60年の節目の年である今年が、式典を開く絶好のチャンスであったのだが、衆議院解散でそれどころではなくなってしまったのが、残念である。
しかし今からでも遅くは無いし、はじめは参加国が少なくても、回を重ねるごとに増えればそれでいい。まずは継続するということが大切である。
来年以降、第二次大戦の和解式典が靖国神社境内で開催できれば、日本にとっても世界にとっても利益は計り知れないと思われる。
それならば靖国神社に眠る英霊も大目にみてくれはしないだろうか。
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特集 日韓国交正常化交渉の裏側(その3)
- 2005/08/13(土) 21:57:55
最後に、この歴史ドキュメンタリー番組・”日韓条約”を制作した、NHKの報道姿勢について少しふれておきたい。
当ブログでは、これまで2回にわたって、番組で公開された日韓外交交渉の裏側を見ながら、
日韓基本条約締結と日本から韓国への政府5億ドル+民間3億ドルの経済援助によって、日本の韓国統治の歴史の清算は両国合意のもと、完全かつ最終的に解決されたことを、改めて確認した。
しかし、NHK・BSで放送されたこの番組の内容は、地上波のNHK総合の番組・”クローズアップ現代”でも取り上げられたが、両番組では、韓国で個人補償の問題を中心に不満が出ているのは、あたかも日本にも責任があるかのような報道ぶりであった。
”日韓条約”もひどかったが、”クローズアップ現代”は輪をかけて内容がひどく、
日韓交渉で話し合われた日本から韓国に支払う金の名目について、日本側が「援助としてなら支払えるが、請求権に基づく賠償金としては支払えない」と主張したことを強調して、
「日本が過去の歴史から目をそらし、歴史を清算したくないがために、韓国の請求権に基づく賠償金支払いを拒否」し、それが現在まで続く「歴史の清算が終わっていない」とする韓国側の不満の原因であるかのように報道して、視聴者が誤った認識をもつよう誘導するような番組のつくりであった。
”日韓条約”を制作した藤井勝夫・林新・山崎秋一郎の三氏ディレクターにとっては、この問題が難しすぎたようなので、日韓併合から日韓基本条約が結ばれて以後の日韓関係までを簡単な例え話にして、彼らの理解の助けとなるようにしようと思う。
むかしむかし、世界町という所に、日本さんと韓国さんが隣りあって住んでいました。
ある時、日本さんは、韓国さんの土地・屋敷を自分名義に書き換えてしまいました。(日韓併合)
日本さんは、自分の地所の一部となった韓国さんの家に行ってみると、暮らしに必要なモノが全くそろっていません。
そこで日本さんは300万円かけて、液晶TV・DVD・エアコン・冷蔵庫・パソコン+ADSLなどを買って、韓国さんの家に据え付けて、快適に生活できるようにしました。(日韓併合時代の日本のインフラ整備)
しかし、日本さんが韓国さんの土地・屋敷を自分名義に書き換えたことがバレて非難され、日本さんは自分の家に戻らざるを得ませんでした。(日本の敗戦と連合国との戦後処理)
そして日本さんと韓国さんは、仲直りのための話し合いをはじめました。(日韓交渉の開始)
さっそく韓国さんは、日本さんに慰謝料として
100万円を請求しました。
日本さんも「私が韓国さんの家に持っていった、液晶TVやパソコンなど総額300万円の家財道具を返して欲しい」と言いました。
ところが韓国さんは
「あの液晶TVやパソコンは、お前が自分で使うために勝手に持ってきたものだ。だから私達、韓国家のものだ。それに日本が持ってこなくても、韓国家は自分達でTVやパソコンを買えたんだ。だから日本に家財道具は返さない。 日本は私達に慰謝料をとっとと払えば、それでいいんだ!」
とムチャクチャで全く筋が通らない理由で拒否しました。
「お前のものは俺のもの。俺のものは俺のもの」というわけです。
日本さんは当然納得できません。
「韓国さんが私達の財産の返還請求を拒否するなら、私達だって韓国さんの慰謝料請求を認めるわけにはいかない。」
こうして話し合いは、いっこうに進まなくなってしまいました。
しかし、韓国さんとの仲直りを望む日本さんは、韓国さんのために譲ることにしました。
日本さんは「韓国さんの息子さん娘さんにも何かお見舞いをしたいのですが」と言うと、
韓国さんは「あなたからのお金は私がまとめて受け取ります。息子・娘には私からお金を渡します」と言いました。
すると日本さんは
「じゃあ、新しい韓国家の出発のお祝い金として
50万円を贈りましょう。
でも、韓国さんへの慰謝料支払い100万円と私達が韓国さんの家に置いてきた家財道具300万円分の返還がそれぞれ行われると、
100万-300万=-200万で、韓国さんが私達日本家に200万払わないといけない。
ですから、私が韓国さんにお支払いするお金は、あくまでも慰謝料ではなくてお祝い金です。 そして韓国さんの家に置いてきた私の家財道具300万円分はそっくりプレゼントしましょう」と言いました。
しかし韓国さんは「この50万円は慰謝料としてもらう。君は自分の家族にお祝い金と説明しておけば良いじゃないか」と拒否しました。
日本さんは、仲直りの成立を優先させて、これを認めることにしました。
こうして、日本さんと韓国さんがお互い合意の上で、「日本さんが韓国さんに50万円支払うことによって、韓国さんはもう二度と日本さんにお金を要求しない」ということを約束した書類に二人でサインしました。(1965年日韓基本条約締結)
これで普通なら仲直りが成立するのですが、そうはいかないのが韓国さんです。
韓国さんは日本さんからもらった50万円を、自分の商売を始める資金に使ってしまいました。
韓国さんの息子・娘が韓国さんに「父さん、日本からもらったお金はどうしたの? 私達が受け取る分のお金はどこ?」と聞いても、韓国さんはとぼけて教えません。
そのうち韓国さんが亡くなると、韓国さんの息子・娘は日本さんの家に毎日押しかけて、「日本は韓国家に与えた苦痛に対する慰謝料を払っていない。昔を全然反省していない」と大騒ぎを始めました。
しかし、日本さんは「その話は解決済みのはずです。お帰りください」と言いました。(当然ですね)
すると韓国さんの息子・娘は「口答えしたな! お前は、昔のことをぜんぜん反省していない。」と言うと、日本さんの家の前で、「我が家は昔、日本にあんなことされた、こんなことされた!」とあること無いこと言いながら、大泣きを始めました。
日本さんと韓国さんの仲直りのいきさつを知らない、同じ町内のアメリカさんやドイツさん・シンガポールさんらは、それを見て、
「日本さんって昔、悪いことして全然反省していないらしいよ。今も韓国さんとの仲直りを拒否して慰謝料も払っていないんだって」とヒソヒソ話をしています。
あわてた日本さんは「マズイことになった。あの問題は解決しているし、自分は悪くないけども、とりあえずあやまっておこう。そうすれば韓国さんの息子・娘さんも納得してくれるだろう」と考えて、韓国さん家にあやまりに行くと、
アメリカさんやシンガポールさんは「そらみろ!やっぱり日本さんが悪かったんだ。韓国さんとの仲直りをずっと拒否していて今さらねえ~」とますます変な誤解を受けてしまいました。
韓国さんの息子・娘は、それを見て、ますます大きな声で泣きながら「日本のヤツは昔ヒドイことをした。金払え~。」と叫んでいます。
(最近の日韓関係の悪化と日本政府のマズイ対応)
ところが、見かねた韓国さんの奥さんが息子・娘にそっと打ち明けました。
「実はね、父さん、日本さんからお金をもう受け取ったの。あなた達へのお見舞金もまとめてね。そのお金は、ウチが商売を始める時に全部使っちゃったのよ。」
(ノ・ムヒョン政権の日韓交渉の外交文書公開)
普通の人ならこれで納得するはずですが、そうはいかないのが韓国さんの息子・娘です。
韓国さんの息子・娘が毎日使っているTVやパソコンが、もともと日本さんが買ったもので、日本さんが善意で韓国さん家へプレゼントしてくれたことや、
韓国さんの息子が今やっている商売の資本金が日本さんからもらった50万だったこと、
50万円受け取る時に「韓国さんはもう二度と日本さんにお金を要求しない」ということを書類で約束してサインまでしたことは、ケロッと忘れて、相変わらず怒り狂っています。
「50万じゃ少なすぎた。日本め、仲直りの金を払ったからって、これで終わりだと思うなよ。」と息子が言えば、
娘は「仲直りのときの約束をチャラにして、一から慰謝料支払いの話し合いをやり直せば良いのよ。 私、中国さんやアメリカさん、ドイツさんに、昔日本がどんなに悪いことしたか、いかに日本が反省していないかを、言いふらしてくるわ」と言っています。
(現在の日韓関係)
どうだろう、これならNHKの三氏ディレクターも理解が出来たのではないだろうか。
日本が請求権に基づく支払いを拒否したのは、過去の歴史から目をそらし反省をしたくなかったからではない。
日本が日韓併合時代に朝鮮半島で行った社会資本整備(日本さんが韓国さんの家に置いてきた液晶TV・パソコンといった家財道具)は、動かすことの出来ない事実であって、歴史の歪曲でも侵略の美化でもなんでもない。
NHKの新しいキャッチフレーズは「まっすぐ真剣」だそうだが、この番組といい、何でもかんでも悪いのはアメリカのせいというNHKスペシャル・”アフリカゼロ年”といい、私にはどうも左に曲がっているように見えて仕方が無い。
↑韓国のデタラメさが良く理解できたという方はポチッとしてください。
民主党に日本の将来を任せることは出来ない
- 2005/08/12(金) 01:19:13
参議院で郵政民営化法案が否決され、その結果、小泉首相は衆議院を解散して、選挙によって国民の信を問うことを決断した。
次の選挙で、どの党が与党になるかで、日本の外交政策が左右されるわけで、郵政事業がどうなるかといった内政問題だけではなく、外交政策への影響という観点からも今度の選挙の結果が注目される。
次回選挙では自民党が分裂選挙となり、政権与党の座につくチャンスがいつになく高まった民主党であるが、民主党ネクスト・キャビネットの「憲法提言中間報告」を読んでみると、背筋が凍りつくような記述のオンパレードなのである。
まず、「私たちはいま、文明史的転換期に立っている。」と断定した上で、あたらしい「地球市民的な憲法」の制定を訴えている。
その「地球市民的な憲法」とは、「主権の縮減、主権の抑制と共有化という、まさに『主権の相対化』に向けて邁進する国家の基本法」だそうで、
具体的には、EUを例にひきながら「国家主権の移譲」あるいは「主権の共有」という新しい姿を目指すのだそうである。
では、どこへ日本の主権を委譲もしくは共有するかと言えば、「日米関係一辺倒の外交・安保政策を脱して、『アジアの中の日本』の実現に向かって、歩み出すべき時を迎えている」と高らかにうたっている以上、アジアの周辺国ということなのだろう。
「地球市民」といい「主権の委譲・共有」といい、荒唐無稽もはなはだしい。
民主主義・キリスト教など共通の価値観を持ち、民主党が理想化するヨーロッパでさえ、「主権の委譲・共有」など実現しておらず、EU憲法の批准のメドさえ立っていない。
EU憲法はフランス・オランダでの国民投票でNOをつきつけられ、イギリスやポーランドでは国民投票そのものが延期されている。
最近では、同じEUの加盟国・イギリスで生まれ育ったパキスタン系イギリス国民がロンドン中心部の地下鉄・バスで自爆テロを実行し、イギリス国民はおろかEU加盟国民全体に衝撃を与えたばかりだ。
なぜなら、テロ実行犯はイギリスで生まれ育ちながら、民主党の言うEU的「地球市民」としての価値観でもなければ、イギリス国民としての価値観でもなく、自らの遠いルーツである、パキスタンのムスリムとしての価値観を最も尊いものとして選択し、自爆死したからである。
フランス社会でも、フランス憲法で定められた信仰の自由・平等の観点から、公立学校での宗教的衣装・装身具の着用を一律に禁止しているフランス政府と、少数民族の権利を主張し、イスラムの教義から女性の頭髪を隠すスカーフの着用の自由を求めるムスリムとの対立が問題となっている。
フランスの国是ともいうべき自由・平等・博愛とムスリムの信仰という二つの文明が現在進行形で激しく衝突しているのである。
さらに民主党は重大なカンチガイをしている。
たとえEU加盟国が主権をEUに委譲・共有化したとしても、イギリスやフランス、ドイツの国民があくまでもEU市民になるだけであって(子供でもわかる当たり前の論理)「地球市民」になるわけではないということである。
つまり、EU全体が主権を有する一つの国家になることであって、EUとEU非加盟国の間には、国境の壁・主権の壁が厳然と存在するのである。
EUが地中海をはさんだ独裁国家リビアと主権を共有したり、EUが欧州最後の専制国家といわれるベラルーシに主権を委譲して、EUが独裁体制になることなど有り得ない。
よって「地球市民」だの「主権の委譲・共有」だのは、いくら美しい言葉で飾ったところで、根本的に認識が間違っているのである。
しかし、民主党が政権与党になれば、本気でやるつもりなのだろう。だから空恐ろしくなる。
その場合、日本が主権を委譲・共有化するのはアジア周辺国なのだろうが、
民主主義・法治主義・言論や思想の自由などの基本的人権の尊重といった、日本国民が絶対に譲れない価値観でさえ共有できない国々ばかりである。
カダフィやルカシェンコ独裁よりもたちの悪い金正日独裁の北朝鮮、
共産党独裁体制を堅持し、武力によって自由主義を弾圧・人権を抑圧したり、ウィーン条約さえ無視して日本大使館を破壊して賠償もしない人治国家・中国、
北朝鮮の人権抑圧から目をそらし、大統領自らが自分の好きな新聞を応援し、気に入らない新聞は「独占禁止」をタテマエにつぶそうとして、世界新聞協会から「言論弾圧国」に指定されている韓国など...
こういった国々は、自らの主権を他へ委譲して、民主主義の外国にあわせて自ら高度な民主主義国家に変身することなど、逆立ちしても有り得ない。
このような状況で、民主党の言うとおり「日本が国際社会の先陣を切って」、これらの国々と「主権を共有」するのは、日本が彼らの価値観に合わせて、民主主義から独裁主義へと逆戻りでもしない限り、実現は不可能である。
日本国民が自分の将来を自分で決める権利でもある主権を、みずから独裁国家に譲り渡し、独裁国家に日本国民の将来を決めてもらうなど、日本国民にとって自殺行為に等しい。
日本国民は、このような空恐ろしい憲法制定をかかげる政党に、日本の将来など任せることはできない。
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ナショナリズムと理想
特集 日韓国交正常化交渉の裏側(その2)
- 2005/08/09(火) 23:22:53
李承晩政権がたおれ、張勉内閣が成立した1960年に再開された第5次交渉でも国交正常化が達成されることはなかったが、
このとき日本側が「韓国人被害者個人に対して、日本政府が何らかの措置を取りたい。」と申し出ると、韓国側が「補償金は韓国政府が一括して受け取り、韓国政府が被害者個人個人に支払いをする。」という趣旨の発言をした。
これ以後、韓国側は「日本側が支払った金は韓国政府が一括して受け取り、個人補償は韓国政府が行う」という方針を明確にした。
61年に韓国の軍人であった朴正煕がクーデタを起こし、張勉内閣を打倒して独裁権力を握った。
当時の韓国は、アジアでも最貧国レベルであり、国民一人当たりの年間所得はわずかに82ドルと貧困に苦しんでいた。(日本が約380ドル前後)
日本が統治していた時代、水力発電所や重化学コンビナートを重点的に建設した朝鮮半島北部は戦後独立して北朝鮮となったが、韓国とは対照的に、それなりの水準を維持した工業国としてスタートし、当時の国民の年間所得も韓国の2倍はあったようである。(韓国統計庁の推計データ「南北韓経済社会相比較」1997年12月)
日本からの社会資本投資が無かった場合の朝鮮というのは、半島全体が日韓国交回復前の韓国のような状態であったろうと思われる。
そのような苦しい状況のもとで、朴正煕大統領は日韓国交回復を決断する。
番組中の金鍾泌元首相の証言によれば、朴大統領は「韓国が生きるために、日本から協力を得るために国交正常化しなくてはならない。」「韓国の近代化・工業化のため日韓国交回復をなしとげようじゃないか」と言ったという。
さらに朴大統領は金元首相に「日本から8億ドルもらってこい」と言うと、金元首相は「私のつかんだ情報では、日本の外貨準備は公称で14億ドル。でも実質的には7億ドルぐらいで、(8億は)難しいでしょう。でも、やってみます。」と言って日韓交渉再開が決定されたという。
金元首相の証言によって改めて確認されたのは、韓国が日韓併合の過去の歴史を乗り越えて、日本との国交断絶状態を終わらせ、友好関係を樹立しようとしたのは、何も「悪い日本人を許してやろう」といった善意ですべてを決断したのではなくて、
むしろ「日本との国交回復で得られるカネで貧しい韓国を立て直そう、そうすれば韓国が得をするじゃないか」という経済的実利面が強い動機となっていたということである。
そして当時の韓国の首脳陣が、日本が韓国に現実的に出せる金は7億ドルと考えていたことも明らかになった。
そうしたいきさつで1961年から始まった第6次・7次会談だが、あくまでも日本に対して請求権による補償金7億ドル(おそらく7億ドルの根拠は金元首相が推測した日本の保有するドル準備全額だろう)の支払いを要求する韓国と、
現在の価値で約17兆円の資産を朝鮮半島に残してきた以上、相互に請求権を行使すれば支払い義務があるのは日本ではなく韓国であるという立場から、「韓国の請求権は認められない。しかし経済協力・独立祝い金という名目で7000万ドル出そう」と主張する日本側とのミゾは埋まらなかった。
しかし、時の大平外相が有償2億ドル・無償2億ドルという譲歩案を示し、
金元首相が「有償2億ドル・無償3億ドル・民間クレジット1億ドル以上でどうだ」という最終案を出し、金額の面では大筋で合意ができた。
(日本のドル準備の大半を失うような金額を提示して譲歩した大平外相は、その後だいぶ叩かれたようだが)
それでも、最後まで交渉が難航したのが、日本が出す金の名目で、日本側が「請求権にもとづく補償金ではなく、経済援助もしくは韓国独立の祝い金として出しましょう」と主張すると、
韓国側が「我々は請求権にもとづく補償金として受け取る。日韓両国はそれぞれ自分たちの良い様に解釈して国民に説明すればいいじゃないか」と言って、
日本が韓国に支払う5億ドルの名目は玉虫色のまま決着し、「日韓双方の請求権問題は完全かつ最終的に解決された」という文言を入れた日韓基本条約は、日韓両国の合意のもと1965年締結されたのであった。
韓国が日本から受け取った5億ドル+民間クレジット3億ドルは、当時の韓国の国家予算まるまる1.5年分以上にあたる巨額なものであり、金元首相の証言にある通り、韓国政府が日韓交渉の目標とした8億ドル請求が、ほぼ認められた”満額回答”であった。
当時はまだ円が弱いソフト・カレンシーだった時代で、国際決済にはドルが必要不可欠な日本にとっても、8億ドルは限界に近い重い負担であったろう。
(これも金元首相の証言が裏付けている)
日本政府から受け取った5億ドルは、韓国政府や経済企画院によって、農業基盤や社会インフラ整備、工業発展と輸出振興のために重点的に使われることが決定された。
(具体的には浦項製鉄所建設に全体の約4分の1が投入され、残りを京釜高速道路・ソウル地下鉄建設などにまわされた)
韓国は工業化のための投資に使う資本の蓄積が無かったために、アジアの最貧国に甘んじていたが、日本から受け取った5億ドル+3億ドルを元手に、韓国経済は年率10%の高度経済成長期に入り、”漢江の奇跡”と呼ばれた。(実際は奇跡でもなんでもない。必然である)
1970年に韓国経済は、一人当たりGNP252ドルと、北朝鮮(一人当たり230ドル)を追い越した。(日本が1500ドル前後)
番組の中で、韓国経済企画院から韓国外務部に対する問い合わせと、その回答についての公式文書も紹介された。
その文書の中で、韓国外交部は「日本への請求権には個人補償分も含まれる。よって(一括して金を受け取った)韓国政府が韓国国民個人個人に補償する義務がある。」と明記している。
この公式文書によっても、あらためて韓国国民個人の対日賠償請求権は消滅し、韓国政府自身もそれをはっきりと認めていた事実が確認できた。
金元首相の証言によれば朴大統領は「韓国が豊かになって余裕ができ、日本にいちいち助けを求めなくてもよくなった時に、(韓国政府が韓国人被害者)個人のめんどうをみよう。」と言ったという。
それでは実際、韓国政府はどれくらい個人補償をおこなったのであろうか?
1975年7月から77年7月までの2年間もの長きにわたって、個人補償の受付が行われ、日本から受け取った金額のわずか5.4%が個人補償分として支払われたという。
しかし、番組の中でわかった重大な事実は、
韓国人被害者・個人補償対象者のうち、多くの人が補償金を受け取れなかった原因が、韓国政府が個人補償受付開始の告知を国民に充分しなかったことと、
受付開始を知った多くの韓国人被害者も、2年間もの時間がありながら、補償要求手続きをしなかったことにもあったということである。
その理由は「手続きが複雑だから。」
こんなふざけた理由で何の手続きをせず、補償金を受け取る権利を失ったのは、韓国人被害者自身もしくは韓国政府の責任であって、日本側は一切関係が無い。
さも日本が歴史の清算を何もしてこなかったように言い、日本政府・民間企業を相手取って訴訟を起こすような韓国人被害者の言動は、日本に対する名誉毀損もいいところで、それに対して見て見ぬふりを繰り返していた韓国政府のやりかたは犯罪とさえ言える。
結局この番組によって日韓交渉の裏側から改めて見えてきたものは、日本は責任を十分過ぎるぐらいに果たしていたという事実だった。
請求権をお互い行使すれば、韓国が日本に金を支払わなければならなくなる。
かといって韓国だけに請求権の行使を認めるのは、国家間の平等の原則から日本としては絶対に認められない。
だから日韓基本条約締結時に、日韓双方が請求権を放棄した。
そして日本は韓国に5億ドル+民間3億ドルを、経済援助もしくは独立祝い金の名目で与え、韓国政府はそれを一括して受け取り、韓国が豊かになるために使った。
よって韓国人被害者個人の補償義務は日本ではなく、一括して金を受け取った韓国政府にあり、
個人補償問題で韓国国民から不満が出ているのは、受け取った金の使い道を決定し、個人補償手続きの告知を充分やらなかった韓国政府と、その手続きをみずから怠った、いい加減な韓国人被害者本人に、原因があったのである。
こうした事実をふまえれば、「日本からの賠償金は少なすぎた。日韓基本条約を破棄して交渉をやり直せ。」とか「日本は補償を充分やっていない。条約を結んだからといってこれで終わったと思うな」といった、政府から民間世論までの、最近の韓国の主張が、いかにふざけたものかが改めて浮き彫りになってくる。
番組の最後に金元首相はこう締めくくった。
「あのときの日韓交渉は(韓国にとって)最善の結果だ。後であら探しはいくらだって出来る。日韓国交正常化によって韓国は最貧国から
世界11位の経済力を持つ国になれた。これでいいじゃないか。韓国の国民にはそう思っていただきたい。」
私も金鍾泌元首相の意見に強く同意するが、日本語で日本国民に向かって呼びかけるのではなくて、どうして韓国語で韓国国民に向かって呼びかけないのか?
金元首相には正義と公正のために勇気を持って自国民に語りかけていただきたい。
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第6回 金正日とどう交渉するか?
第14回 次の時代にふさわしい日韓関係のために
特集 日韓国交正常化交渉の裏側(その1)
- 2005/08/07(日) 23:29:36
最近(2005年6月18日)NHK・BSで、1965年の日韓基本条約締結に至るまでの、14年間の日韓国交回復のための外交交渉の裏側をとりあげた番組・”日韓条約”が放映された。
韓国政府が公表した各種公式文書や、当時、韓国側で外交交渉の陣頭指揮をとった金鍾泌・元首相の証言など、貴重な資料が数多く紹介されていた。
そこで、番組の中でとりあげられた貴重な資料や証言のうち、クロフネがこれはと思ったものを中心に要約して紹介しつつ、一部公開された日韓交渉の裏側をみていきたいと思う。
(よって、ここで紹介した各人の発言・資料の全てが一字一句同じではないことを断っておく)
日韓国交回復のための交渉は、李承晩政権時代の1951年から始まった。
李承晩政権時代の第1~3次交渉は結局決裂することになるが、その原因の主なものは20億ドルの請求(番組では根拠不明)を主張した韓国側に対して、
半島から日本へ帰国する際に、韓国側が没収した日本人引き揚げ者の現金・預金や有価証券などを含む個人資産の返還を日本側が要求すると、
韓国側が「韓国の請求権は認められなければならないが、日本側の請求権は認められない」という全くムチャクチャな、ダブルスタンダードの要求をしてきたことがまず一点。
さらに韓国側が「植民地支配を受けた36年間の賠償もしろ」と主張したのに対して、
日本側の久保田貫一郎主席代表が、今から述べることはオフレコの発言であると断った上で、「日韓併合は負の側面ばかりではなく日本は朝鮮半島の工業・農業基盤を整備し、日本は年間二千万円も朝鮮半島に持ち出した時もあった。それならば日本もそれらの請求権の行使を要求する。」と発言すると、
韓国側は「日韓併合さえなかったら、韓国は独力で近代国家を築いていた」と反論、韓国外交官が、オフレコという約束を破って韓国マスコミに久保田代表の発言を意図的にリークして大騒ぎとなった、いわゆる久保田発言事件が発生したのが、二点目であった。
韓国側は、”久保田発言”を撤回しろと要求したが、「日本の投資が朝鮮半島近代化に貢献したのは事実であるし、間違いのない発言を撤回することはできない。」と言って久保田代表が韓国側の要求をつっぱねた。
日韓の対立は反共政策上好ましくないと考える、アメリカ・アイゼンハワー政権が、韓国には李承晩ラインの即時廃止を、日本側には”久保田発言”の撤回を要求して圧力をかけたが、結局日韓交渉は物別れに終わった。
そもそも日本から朝鮮半島に持ちこんだ日本の政府・民間人の資産は、朝鮮の人々から奪ったものではないから、”植民地統治の搾取”とは関係のない、日本側の正当な資産である。
さらに「久保田発言は植民地支配の正当化だから間違っている」といった反論も全く関係のないものであって、日韓併合が正しかろうが、間違っていようが、どちらにしても日本が半島に持ちこんだ資産が消えうせてしまうわけではない。
イギリスのインド植民地支配が終了したときも、在インド・イギリス人資産は各個人に返還されたし、香港統治が終了しても、HSBC(香港上海銀行)やキャセイ航空といったイギリス系企業の資産が中国に没収されることはなかった。
よって日本に請求権があるのは明らかであり、本来ならそれらは日本側へ返還されるべきなのは当然の論理的帰結であるが、「日本の請求権は認めないが、韓国の請求権は認めろ」というムチャクチャで破綻した論理ばかりをふりかざし、
さらに外交交渉におけるオフレコの発言を、韓国マスコミに意図的に流すなど、当時の韓国人外交官のでたらめぶりには驚かされた。(いや現在もたいして変わっていないが)
また韓国側の「日韓併合さえなかったら、韓国は独力で近代国家になっていた」という反論も、それ自体が全く無意味なもので、
まさに韓国が独力で近代国家を建設・維持する能力が無かったからこそ、日韓併合を拒むことができなかったのであって、韓国側の「日韓併合さえなかったら~うんぬん」という命題それ自体がそもそも成り立たないのである。
もちろん、仮に韓国側の主張が正しかったとしても、日本が半島においてきた資産がいまさらゼロになるわけではない。
オフレコの約束を破って恥とも思わず、国家間の平等互恵の原則や論理的な議論にもとづく交渉さえ通じない韓国外交官に応対した久保田代表も、さぞかしご苦労なさったことだろうと思う。
久保田代表は、国益を踏まえて一本筋の通った主張をする骨太の職業外交官という印象を強く持ったし、国会や世論の大半も久保田氏を支持していた。
当時は戦前の記憶が正確に残っていたのか、まだまだ日本の世論が健全だった時期と言えるだろう。
次回へ続く
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新たな局面を迎える中東情勢
- 2005/08/02(火) 19:41:58
中東で、今後の当該地域の情勢に変化を与える可能性のある出来事が、いくつか起こっている。
まず最初に1日、サウジアラビアのファハド第五代国王が薨去され、同国王の異母弟で81歳前後のアブドラ皇太子(第1副首相)が新国王となられた。
http://headlines.yahoo.co.jp/
hl?a=20050801-00000092-mai-int
ファハド国王は、国内においては”絶対王政”をしき、外交は親米路線を基調にして、サウジアラビアをアラブ世界におけるアメリカ第一の同盟国の地位につけた。
アメリカも、イランの帝政が打倒された結果、第二次オイルショックが勃発したことをふまえて、サウジ王制の安定化に力を注ぎ、オイルショックというアメリカにとっての大悪を避けるために、”絶対王制”という小悪には目をつぶるという外交を継続してきた。
その結果、ビン・ラディンのようなイスラム原理主義者が台頭するきっかけともなったのは以前述べた。(関連記事参照)
そのファハド国王が薨去なさったことで、世界最大の産油国・サウジアラビアは新しい時代を迎えようとしている。
果たして新国王の対欧米外交はどうなるのであろうか?
識者の意見では、外交政策に大きな変化は無いだろうとのことだが、今後が要注目である。
一方イランでは、EUとのイランの核開発についての交渉が暗礁にのりあげ、イランがウラン転換作業の再開を宣言した。
http://headlines.yahoo.co.jp/
hl?a=20050802-00000009-san-int
これに対して、英・独・仏のEUとアメリカが反発、国連安保理にこの問題を付託する可能性を示唆した。
ただ、イラン核開発問題が安保理に持ちこまれても、すんなりアメリカやEUの思惑通りにはいかないかもしれない。
イランは上海協力機構の準加盟国となったばかりだが、上海協力機構の盟主であり、イラン国内に油田権益を多数保有する中国が、欧米の対イラン強硬措置に反対するであろう事は容易に推測できるからだ。
またイランの原子力発電所建設に一枚かんでいるロシアも反対に回るだろう。
さらにイラン情勢で気になるのは、宿敵イラクとの和解・急接近が報じられていることだ。
http://headlines.yahoo.co.jp/
hl?a=20050719-00000008-san-int
このようなことが可能になったのはもちろん、アメリカによって、少数スンニ派主導のフセイン政権が打倒され、フセイン政権下で抑圧されてきた多数シーア派が、イラク戦争後の選挙で勝利を収め、政権をとったからである。
今回イランを訪問した、ジャアファリ・イラク新首相もシーア派政党の出身で、フセイン政権時代には迫害をのがれてイランに亡命していたそうである。
イラクがシーア派主導となれば、シーア派の総本山ともいうべきイランとの関係が緊密化するのは当然のことで、これには当然、サウジやクウェートといったスンニ派の周辺国のみならず、アメリカにとっても歓迎できない事態だ。
欧米は、このような事態にならないよう、イラン・イラク戦争では、フセイン政権を援助し、湾岸戦争では、アメリカを中心とした多国籍軍がフセイン政権を充分打倒できたにもかかわらず、あえてそれをしなかったと言われている。
新生イラク国家が、どういう外交を打ち出すのか、欧米と協調していくのか、それともイランの指導のもと二人三脚で、欧米と対抗していくのか、こちらも今後が要注意である。
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