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第4回 ボタンのかけ違いを繰り返すな

  • 2005/05/20(金) 23:57:22

 南北朝鮮の統一は、新生国家・統一朝鮮にとっても周辺国にとっても外交上の大きな区切りとなる。

特に日韓関係において長年の懸案だった、竹島問題については特別な意味を持つことになるだろう。

 日韓関係においては、本来なら竹島問題を完全に解決してから日韓の国交正常化を果たし、韓国への経済援助を開始すべきだった。

しかし、当時の国際情勢とアメリカの圧力の影響もあったが、1965年の日韓国交正常化の時には、日本が竹島問題を棚上げにして韓国への経済援助を開始してしまうというまずい外交、「ボタンの掛け違い」をしてしまった。

韓国は日本の援助を受けて、農業中心の後進国からアジアではトップクラスの工業国へと変貌した。

日本政府・外務省には、援助によって日本と韓国の友好関係を深めることができ、それによって日韓間の様々な懸案の解決が可能になるだろうという意図があったことは間違い無い。

しかし日本の援助を国民に知らせて感謝を表明し、反日政策を放棄するどころか、竹島問題に代表されるように、強まった経済力をバックに反日政策と排他的な民族主義をますます強めていったのである。

その意味で日本の対韓経済援助は、自らの手で敵を育てる、トラブルメーカーを作り出すという利敵行為以外の何物でもなかった。

この「ボタンの掛け違い」が現在までも尾を引いて、竹島問題をはじめとする様々な問題が未解決になる原因となってきたし、日本海呼称問題、つくる会の教科書問題などの新たな火種を作り出す結果となったのである。

 しかし半島の南北統一という外交上の大きな区切りは、東アジア情勢に動きを与え、それが竹島を取り戻す絶好のチャンスとなる可能性がある。

たとえ統一朝鮮が経済的に困窮しようと、中国の政治的介入に苦しもうとも、日本お得意の”カワイソウ”外交で、安易に救いの手を差し伸べて、日本の敵をみずから育てるような愚をおかしてはならない。

まず、統一朝鮮が日本に助けを求めるまで、どっしりとかまえて日本は一切動かないことが求められる。

統一朝鮮が日本に助けを求める前に、日本側から「助けましょうか」などとは間違っても提案してはならない。

(日本の政府・外務省はこういう変なところは気が利いていているようだ。 そしてこれが「日本の援助は顔が見えない」と言われる原因だろうと思う)

そして統一朝鮮が何らかの援助を求めてきた場合は、そのみかえりとして竹島返還を絶対条件とする事が必要である。

つまり、経済的もしくは政治的援助を統一朝鮮に”高く売りつけてやる”わけである。

そのような最低限のしたたかさが無ければ竹島を取り戻すことなどできないであろう。

 竹島の返還と反日政策の完全放棄無くして、日本は統一朝鮮に対する協力・関与政策を行なうことは絶対に許されない。

1965年の失敗は繰り返してはならないのである。

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第3回 統一朝鮮の出現に対し、どう対応すべきか?

  • 2005/05/12(木) 23:56:51

 それでは、もし南北朝鮮の統一が達成されたならば、日本としてはどのように対応すべきだろうか。

 将来、統一朝鮮がどういった国になって、どのような外交政策をとるかは、まだ誰にもわからない。

崩壊した北朝鮮を吸収して、日本やアメリカといった自由主義陣営と共同歩調をとる、穏健な民主国家となるかもしれないし、

統一によって刺激された”朝鮮民族原理主義”の大義を周辺国に振りかざし、中国東北地方のいわゆる”間島”やロシア沿海州、はては対馬までを”失われた朝鮮”と宣言して奪還を目指すとともに、

国内を挙国一致体制とするために思想・言論統制をしく、超民族主義的全体国家となるかもしれない。

あるいは、対中国貿易が生命線となっている韓国とエネルギー・投資を中国に依存する北朝鮮とが、南北でゆるやかな連邦国家を形成するかたちで統一し、

中国や北朝鮮に対して何も言えなくなった韓国が、反対世論を圧殺しながら在韓米軍を撤退させて、日米の自由主義陣営と決別し、統一朝鮮が中国の衛星国家、”中国の23番目の省”(つまり台湾をのぞいて)となるというシナリオがあるかもしれない。

 しかし統一朝鮮に対しては、いずれの場合でも韓国編で述べた”対韓外交のガイドライン”が有効であるように思う。

対韓外交のガイドラインとは、

1.日本の国益を常に冷静に考慮しながら、半島情勢に積極的に介入する関与政策と、半島への関わりを断つ不干渉政策をうまく使い分ける。

2.「日本は許せない敵であって反日政策はやる。だけど韓国が困ったら日本に助けてもらう」という韓国特有の幼稚な依存思想、”国益のツマミ食い”を日本は絶対に許さない。


の二本柱であった。

 将来、統一朝鮮がどういった国になって、どのような外交政策をとるか、それは統一朝鮮の国民が決めれば良い事であって、日本がとやかく言う筋合いのものでは無い。(できれば穏健な民主国家となって欲しいが)

しかし、「統一のために日本にお金を出してもらい助けてもらう。だけど統一朝鮮の国家運営が軌道に乗ったら、反日政策を開始する」といった、いつものパターンは絶対に許してはならない。

”統一という平和運動のため”とか”日韓友情”といった空虚なスローガンにおどらされてしまえば、

半島の非核化や拉致問題の賠償などといった問題の解決をうやむやにされるにもかかわらず、アメリカも中国も嫌がる南北統一の費用負担という”不良債権処理”を負わされて、

日本だけが煮え湯を飲まされるパターンにはまりかねない。

(日本人が弱いのは、まさに”平和”とか”友好”といったお題目。たとえ実体のない空虚な掛け声・おまじないであってもだ。)

 日本としては、統一朝鮮が日本海の名称の変更運動といった一切の反日政策をやめることを確約して、竹島を日本へ返還、また日本人拉致被害者を無条件で帰国させて賠償金を払うかわりに、日本の協力を得られる親日国となるか、

日本からの一切の協力を拒否して、反日国家となる道を歩むのかの踏絵を、統一朝鮮にも絶対に踏ませなければならない。

くりかえすが、一切の反日政策の放棄を確約させること無くして、日本は統一朝鮮に対する協力・関与政策を行なうことは許されないのである。

第2回 統一という名の宴のあと

  • 2005/05/02(月) 23:56:53

 前回では、南北朝鮮が統一した場合に考えられるシナリオを3つほど、想定してみた。

しかしながら、混迷を深める現在の朝鮮半島情勢から、どのシナリオが現実のものとなるのかは、筆者には予測がつかない。

ただ、どのようなシナリオで南北朝鮮の統一が実現しても、日本としてどういった外交を取るべきかは、考えておかねばならない。

 まず南北朝鮮の統一に際して、最大の問題となってくるのが、統一の費用負担をどうするかという問題だ。

韓国の国民の間では「南北統一によって、日本に匹敵する強国が出現する。だから日本は統一を妨害しているのだ」といった話が根強く信じられているが、笑い話にもならない。

現在の経済の状態のままで北朝鮮と南北統一となった場合、1960年代からほとんど改善していないとみられる、粗悪・貧弱な社会インフラの交換・整備、資本主義社会を全く経験していない全国民の再教育、失業者予備軍ともいえる110万朝鮮人民軍将兵や国営企業労働者の再雇用問題、紙くずに等しい北朝鮮ウオンの韓国ウオンへの交換などなど、統一のための費用にいくらかかるか見当もつかないのが現状だ。

「強国の出現」など現在の状況では夢にも思われない。 もし統一となった場合、その費用を一体誰が負担するのかが最大の焦点となろう。

 次に、統一朝鮮がどういった外交政策を持つ国になるのかという問題が焦点となる。

もし南北統一となれば、現在の韓国・北朝鮮の外交方針が、その後も継続されるという保証はどこにも無い。

場合によっては米軍の完全撤退も含めて、それまでの外交方針が完全にリセットされて、まったく新しい外交政策を取る事もありうる。

 そして最後に、もし北朝鮮が核兵器を本当に保有していたとして、統一後その核兵器はどうなるのかといった問題だ。

日本では「核兵器は持つべきでない」という強い国民的ムードがあるために、往々にしてすべての外国もそう考えているに違いないと思いがちだが、核兵器の保有や核実験の成功を国民的偉業・強大国の証しととらえ、わざわざ教科書に載せて国民に教育している国(たとえば中国)が厳然と存在しているのが世界の現実である。

80年代に韓国政府が核兵器開発をしていた事実が、最近国際社会の明るみに出たのは記憶に新しいところだし、韓国国民の間にも「統一したら北朝鮮の核は我々のもの」と考える人がいるように、統一後の北の核兵器の行く末は不透明である。

 日本にとって、”統一朝鮮最悪のシナリオ”は、「日本がほとんどの南北統一のための費用を負担しながら、国民には一切知らされないために感謝もされず、『統一は朝鮮民族の偉大な力によって成し遂げられた』という誤った朝鮮民族史観が定着してしまう」ことだ。

(実際、戦後日本の韓国への経済援助は韓国国民にまったく知らされず、”漢江の奇跡”も韓国政府五ヵ年計画の成果と歴史教科書で教育されている。)

そして「統一によって刺激され昂揚した偏狭な朝鮮民族ナショナリズムである”朝鮮民族原理主義”と、統一による経済不振で高まった国民の不満がないまぜになって、”大朝鮮主義”へと発展し、彼らの主張する”失われた朝鮮”(高句麗・渤海の旧領であるロシア沿海州から中国東北地方、あるいは対馬まで)を回収せよという一大運動となり、北朝鮮から引き継いだ核兵器で周辺国を威嚇するようになる」と東アジアは最悪の情勢をむかえる。

(武大偉中国外交部副部長が、中国東北地方の朝鮮族自治区、いわゆる”間島”の領有権を、南北統一後もいっさい主張しないよう韓国政府に要請したところ、韓国高官が拒否したのには、筆者は驚かされた。

韓国政府は中国東北地方の回収をあきらめていないという公式宣言に等しいからである)

 しばしば、韓国の政治家が「南北統一の時に、日本が多額の経済援助をする事によって歴史に名を残す事ができる」などといった発言をするが、このような発言に日本人が無邪気に踊らされてはいけないのは、ちょっと想像力を働かせればすぐにわかる事であろう。

第1回 南北統一はあるのか?

  • 2005/04/27(水) 23:17:41

 シリーズ「日本外交と北朝鮮」編と「日本外交と韓国」編では、当分南北統一はないという想定のもとに話を進めてきた。

しかし、近い将来において南北統一の可能性が全く無いわけでは無い。そこで今シリーズからは朝鮮半島が南北統一した場合、どういったシナリオが考えられるか、そして日本としては外交・安全保障政策上、どう対処すべきかについて考えてゆく。

それでは南北が統一する場合に考えられるシナリオをあげてみよう。

1.南北どちらかの軍が相手国に侵攻し政権を打倒(あるいはアメリカが軍事力を行使して北朝鮮の金正日政権を打倒して)、軍事力で南北の統一が達成されるシナリオ。

2.北朝鮮で市民あるいは軍による革命が勃発して金正日独裁政権が崩壊し、韓国が北朝鮮を吸収するかたちで統一が達成されるシナリオ。

3.北朝鮮と韓国がそれぞれの共産主義独裁体制、資本主義体制を維持しながら、ゆるやかな連邦制国家として統一するシナリオ。

以上の3つが現時点で考えられる南北統一のシナリオである。それでは3つのシナリオについて個別に考察をくわえてみる。

 まず第1のシナリオ、南北のどちらかが軍事力で相手を打倒し統一を達成する可能性であるが、これは現時点でほとんど0に近い。

北朝鮮の旧式兵器を中心とした通常戦力で韓国軍を打ち破るのは不可能に近いし、韓国に核の抑止力を提供しているアメリカの政策が変わらないかぎり、北朝鮮が韓国を核兵器で脅迫したとしても韓国が屈服する事はないだろう。

逆にノ・ムヒョン政権の宥和的な対北政策のもとでは韓国軍の北進は考えられないし、もし北進が現実のものとなったとしたら両国に多大な犠牲が予想される点から考慮しても可能性は低い。

アメリカが軍事力で北朝鮮を打倒する可能性は、北の核開発のからみもあり、いくぶんか考えられるが、その場合韓国が(少なくともノ・ムヒョン政権が存続するかぎりでは)強硬に反対するだろうし、イラク戦争の戦後統治のやっかいさを経験したアメリカも慎重にならざるを得ないだろう。

よって第1のシナリオの可能性は現在は、かなり低いといえる。

 第2のシナリオについては、資本主義的要素をとりいれた北朝鮮版改革開放政策がスタートし、中国や韓国が北を熱心に援助している現状況では、可能性としてさほど高くないのではないか。

もしあるとすれば、北の経済政策のミスが極端な貧富の格差を生み、貧民層の不満が爆発して金正日体制打倒へと向かう、”突然死”シナリオだろう。

 3番目のシナリオであるが近い将来、南北統一があるとすれば、可能性が一番高いのは、現時点ではこれではないかと筆者は考えている。

金正日の父親である金日成元主席が、かつて”高麗民主連邦共和国構想”というものを打ち出した事がある。

金日成のもくろみはおそらく、南北の体制をそのままにしても、とりあえず”統一国家”という既成事実を作り、

「統一国家になったからには国連軍(つまり米軍)が半島に駐留する必要は無くなった」という論理のもと米軍を韓国から追い出し、その後に韓国国内に潜伏する北の工作員とそのシンパを武装蜂起させ、それに呼応する形で韓国より量的にまさる北朝鮮軍が南進、半島の赤化統一を実現させるというものだったのだろう。

1980年代に、この構想を金日成が呼びかけた時は、韓国軍事独裁政権側が拒否し実現しなかった。

 しかしキム・デジュン、ノ・ムヒョン両左翼政権の相次ぐ誕生によって、韓国内部に左翼思想を美化する風潮が濃くなり、いまや政府与党内に左翼学生運動経験者までいる始末である。

軍拡競争にも経済戦にも勝利した韓国が思想戦で完敗を喫した結果、現在韓国と北朝鮮はまさに二人三脚で内政・外交を展開しているのである。 そのありさまは、ゆるやかな統一国家の一歩手前といった感さえある。

このまま若年層の支持が厚い左翼政権が続くならば、一度は死んだ”高麗民主連邦共和国”という名の亡霊がよみがえるシナリオがあるかもしれない。